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創作短編(53):女武者 巴御前 –6/8 [稲門機械屋倶楽部]

                              WME36 梅邑貫


「木曽殿は信濃より、巴、山吹とて、二人の便女を具(トモニ)さられたり。山吹はいたわりあって、都にとどまりぬ。中にも巴は色白く髪長く、容顔まことに優れたり。強弓精兵、一人当千の兵者(ツワモノ)なり」

「我、去年の春、信濃国を出(イデ)しとき妻子を捨て置き、また再び見ずして永き別れの道に入(ハイ)らんこと悲しけれ。さらば、我亡き後までも、このこと知らせて後の世を弔はばやと思えは、最後の件よりも然るべきと存ずるなり。疾(ト)く疾く忍び落ちて信濃へ下り、この有様を人々に語れ」

 この一節は平家物語の「覚一本」の内、「木曽最期」に描かれております。
それによると、木曽義仲は京へ連れて行った愛妾の山吹は京へ残して、巴御前だけを戦場へ伴っています。
 おそらく、山吹には巴御前ほども武芸が無いか、或いは単なる便女であったと推測されます。

 話は少し遡りますが、宇治川の戦いに際して、畠山重忠が家臣の半沢六郎に、巴御前とは何者かと問うており、そのときの半沢六郎の答が記録されています。
「木曽殿の御乳母に、中三権頭が娘巴といふ女なり。強弓の手練れ、荒馬乗りの上手。乳母子ながら妾(オモイモノ)にして、内には童を仕ふ様にもてなし、軍(イクサ)には一方の大将軍にして、更に不覚の名を取らず。今井、樋口と兄弟にて、怖ろしき者にて候」

これに畠山重忠は「かの者、女にあらずして鬼神なり」との一言を遺しました。


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