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「遼寧」は空母か [稲門機械屋倶楽部]

                                                         WME36 村尾鐵男


9月25日、長く改装工事中であった中国初の空母と喧伝される「遼寧」が、胡錦濤主席と習近平副主席が臨席して海軍への引渡式が行なわれました。

旧ソ連が建造したクズネツォフ級航空重巡洋艦の二番艦でソ連時代の艦名はワリャグ(Varyag)でした。飛行甲板の全長は304.5mで前方がスキージャンプ式と呼ばれて反り上がっています。動力は蒸気タービン4基で4軸の推進器を回転させて最大速度29ノット(≒53km/h)で67,000トンの巨艦を進めます。蒸気タービンの総出力は最大20万馬力です。
空母を運用するには3000名ほどの熟練要員が必要で、加えて搭載する艦載機の発進・着艦訓練にも三年ほどを要します。
「ワリャグ」はソ連崩壊時にウクライナの造船所で建造中であり、そのまま廃艦となり、所有権もソ連邦からウクライナへ移管されたので、2000万ドルでウクライナ政府から欲しくてたまらなかった中国へ1998年に売却されました。
それから14年もの間、大連の造船所で改装工事が進められ、ようやく中国海軍へ引き渡されました。しかし、ウクライナの黒海造船所で起工されたのが1985年末で、進水したのが1988年11月です。「遼寧」は起工されてから27年も経過した旧式艦です。
スキージャンプ式飛行甲板は、米国海軍の空母に常備される蒸気カタパルトが旧ソ連では遂に実用化できなかったことによる代替手段で、この目的に適った殲15型機の30機が搭載されると伝えられます。

「遼寧」は本格的空母ではなく、近隣諸国を威圧するための道具に過ぎません。それが証拠に、米海軍はいさかも脅威を感じていません。


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ぼくあずさ

村尾さん
「遼寧」がイージス鑑、駆逐艦、潜水艦を引連れて日本列島
周回航海をする時期は何時ごろと考えますか?
中国が建造中と伝えられる2隻の空母は原子力推進になる
のでしょうか?
by ぼくあずさ (2012-09-28 10:10) 

村尾鐵男

毛沢東の「張子の虎」論に従えば、中国政権は来年早々にも「遼寧」を日本一周の航海に出すでしょう。
しかし、中国にはきわめてリスクの大きい作戦で、海上自衛隊、米海軍、さらにはロシア海軍にも「遼寧」の実力を知らしめることになり、かえって逆効果となります。
今の中国が、次の空母を原子炉を搭載するのは容易でしょう。むしろ、蒸気タービンの製造の方にネックがありと私は見ます。
by 村尾鐵男 (2012-09-28 10:59) 

ぼくあずさ

1980年代に私のよく知るドイツ人高級技術者を特別待遇で中国
に招います。また、中国人技術者をドイツの工場で見かけました。
FDは台プラ経由で多数の発電設備を中国に納入しています。
舶用蒸気タービンの開発はネックにはならないと思います。中国人
高級技術者の実力は侮れないというのが1972年の初訪中以来
の私の認識です。一党独裁の中国は極めて危険な隣国です。
by ぼくあずさ (2012-09-28 12:01) 

村尾鐵男

私は蒸気タービンは門外漢ですから、僅かに垣間見た体験と伝聞が拠り所となります。
16年前、揚州の火力発電所を訪れて自国産の蒸気タービンを見せてもらいましたが、80%ほどの負荷にもかかわらず、その振動の大きいことに驚きました。あの振動では加速性は期待すべくもないとも思いました。又、発電所長が小さな故障が多く、しばしばタービンを停めなくてはならないとこぼしていました。
舶用蒸気タービン、特に海軍艦艇用は巡航状態から戦速への加速性が重要視され、空母では搭載機の発艦時には風上に向かって最大戦速まで加速しますが、このときにタービンが大きく振動するようでは、安定した長期運用が難しくなります。
大型蒸気タービンの許容振動はどれほどでしょうか。私が親しんだ大型旅客機用のガス・タービン・エンジンでは、短時間の105%出力時にタービンケースの外側で許容される振幅が1000分の4ミル、即ち、0.1mm以内でした。舶用蒸気タービンも同じようなレベルと推察しますが、中国製大型蒸気タービンは現在どの程度に品質が向上しているのか、私には判断する材料がありませんが、日米独を上回るとは思えません。
by 村尾鐵男 (2012-09-28 14:22) 

ぼくあずさ

村尾さん
許容振幅についてのお訊ねですが、IEC(1970)標準では50Hz機で
1ミル、60Hz機で0.8ミルです。メーカにより許容値は異なります。
「ぼくあずさの独り言」の範疇に入る私の20代のことですが、早稲田での
横田教授と高橋助教授の授業が問題解決に大いに役立ちました。
タービンケーシング固有振動数の共振と軸承自励の二つです。
横田教授に6ヶ月間に亘り川崎工場で「減衰能を考えた溶接設計」を
テーマに講演していただきました。FDが開発した溶接型鉄板ケーシング
技術をSiemensに供与しました。おそまつ様でした。
なお、中国人技術者達は問題解決能力を十分に持っていると思います。
by ぼくあずさ (2012-09-28 15:43) 

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