天下、王土にあらざるはなし [稲門機械屋倶楽部]
WME36 村尾鐵男
詩経・小雅
溥天之下 莫非王土 率土之濱 莫非王臣。
溥天(フテン)の下(モト)、王土(オウド)に非(アラ)ざるは莫(ナ)く、率土(ソツド)の濱(ホトリ)、王臣(オウシン)に非ざるは莫し。
詩経の小雅、谷風の什、北山に詠われる有名な詩です。「什」は十篇の詩を一巻にまとめたものを指します。溥天の「溥」は「遍(アマネ)く」の意味で、溥天は天下とか世界と訳されます。「王土」の王は各王朝の王とか皇帝です。「率土の濱」とは、「陸地が続く限り」とか「行き着ける限り」の意味です。
「天下に王の土地でない場所はない。いかに辺鄙(ヘンピ)な場所に住んでいても、皆、王の臣下である」
中国人が太古の時代から信じている王土論で、現在の中国人にも国境の概念が希薄です。ともかく、中国人が住む土地は中国領と信じ、今は中国人が住んでいなくても、大昔に住んでいれば、その場所も中国領だと信じます。
台湾も満洲もチベットも、回教徒が住む新疆ウィグルも中国領であると主張する根拠がここにあります。でも、そのくらいで驚いてはなりません。
太古の時代、北京原人の末裔が北へ移動してベーリング海峡を跨いでアラスカへ渡り、住み易い温暖の地を求めて南下し、アメリカン・インディアンとして定住しました。だからアメリカは中国領だと真面目に主張する中国人がいます。アメリカは、中国の皇帝が油断している隙に、コロンブスに掠め取られてそうです。
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