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創作短編(44):直江兼續が詠む漢詩 -10/12 [稲門機械屋倶楽部]

                                  2012-02 MWE36 梅邑貫


暁鐘
支枕幽斎夢不成
疏鐘報暁太多情
豊山霜白一声裏
月落烏啼三五更

暁鐘(ギョウショウ)
枕を支え幽斎(ユウサイ)に夢成らず
疏鐘(ソショウ)暁を報じて太(ハナハ)だ多情なり
豊山(ホウザン)に霜(シモ)白く一声の裏
月落ち烏啼いて三五更(サンゴコウ)。

 直江兼續の「暁鐘」は、盛唐の詩人張繼の次の漢詩を下敷きにしています。


楓橋夜泊 張継
月落烏啼霜満天 月落ち烏啼いて霜天に満つ
江風漁火對愁眠 江風漁火、愁眠に対す
姑蘇城外寒山寺 姑蘇城外の寒山寺
夜半鐘聲到客船 夜半の鐘聲、客船に到る。


「暁鐘」の大意は次のように読めるでしょう。「静かな部屋で枕に頭を載せてはいるが、なかなか眠れない。間を開けて聞こえる鐘の音は暁を報せているが、往時を思い出すと情が昂ぶってますます眠れない。豊山には白い霜が降りて、ときあたかも烏の一声が響く。月は沈み、烏も啼いて、今は三更から五更の辺りか」。三五更とは午前零時から夜明け前の午前四時頃の間を指します。

 「暁鐘」については、直江兼續が妻の船とは別に密かに想いを寄せた女性と訪れた地を、今は独りで訪ねた折に詠んだとの説と、上杉家の筆頭家老としての重責に耐えつつも、過ぎし日を思い返す詩であるとの両説があります。私如きは口を挟めませんが、私は後者を採ります。何故なら、「楓橋夜泊」が女性とは無縁だからです。


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