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磨耗と腐蝕と疲労との闘い -1/11 [稲門機械屋倶楽部]

                                   2012-03 WME36 村尾鐵男

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   機械系技術者として航空会社で働いた時期を振り返ると、それは「磨耗と腐蝕と疲労との闘い」でした。疲労とは私自身の疲労もありますが、文意は金属疲労のことです。

磨耗は金属と金属が摩擦し合えば、程度の差こそあれ、避けることができません。腐蝕は、それが金属製品であって塗装されていても、塗装が剥がれたら、徐々に腐蝕が進むことが避けられません。疲労は、人体も酷使すれば疲労しますが、金属とその製品も同じ作動を繰り返せば疲労します。飛行機も自動車も船舶も、さらには一般の機械も身近な家電製品も、長く使えば磨耗と腐蝕と疲労は確実に生じます。地味な話題ではありますが、しばしお付き合い下さい。

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摩擦と磨耗

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 磨耗と腐蝕と疲労、この三種を較べると、摩擦で生ずる磨耗は比較的に対処が容易です。それは、磨耗は目で見て発見できるからです。加えて、磨耗は機械部品の外部から、即ち、回転軸と軸受けであれば、それが擦り合う表面から磨耗するので、内部で進行する場合もある腐蝕や疲労に較べて発見は容易です。

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 しかし、磨耗は放置できません。たとえば、回転軸の軸受けと接する部分が磨耗して、これを放置すれば回転軸が次第に細くなり、いつかは回転力に抗することができなくなって折損します。

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 磨耗は金属と金属が擦り合うことだけで生ずるものではありません。空気や水との激しい摩擦でも磨耗します。私の実体験ですが、ガスタービン・エンジン、ジェット・エンジンのことですが、最前部にある初段のコンプレッサー・ブレードは、新品のときはその前縁部が丸くなっていますが、1万時間も大空を飛ぶと、空気流で磨耗して、剃刀の刃のように薄く鋭くなります。しかも、その表面はザラザラになって、空気の流れも阻害します。

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 船の場合、船底の海水に浸かった部分は、塩水による腐蝕との相乗作用もありますが、一年に0.6mmの割合で薄くなると聞きました。ですから、10年で6mmも喫水線下の鋼材は薄くなります。


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コメント 3

ぼくあずさ

興味深い内容です。今から外出ですので、後ほど蒸気タービン低圧翼の
エロージョンについて私の経験をコメントします。
by ぼくあずさ (2012-03-27 09:28) 

ぼくあずさ

低圧翼は湿り蒸気域で作動します。水滴が動翼の衝突しないよう工夫
した設計をします。動翼先端に近い部分の前縁を焼入れして硬度を上げる
こともあります。ある製油所向けの蒸気タービンは、シェルの技術者から
前縁焼入れを認められませんでした。納期を守るため、エロージョンの問題が生じることは免責を条件に止む無く要求を受け入れました。運転開始1年後の定期検査時に、特急仕事で制作したオリジナル設計の低圧翼に植え替えました。素人が口出しするとこんなことが起きるのです。
by ぼくあずさ (2012-03-27 20:51) 

村尾鐵男

プロペラも同じです。新しいプロペラは前縁部が滑らかに丸みを帯び、ピカピカに輝いています。
3000時間も飛ぶと、プロペラ機は高い高度へ上がらないので、空気と空気中の水分との摩擦、地上では滑走路上の小石や砂塵を吸い上げ、前縁部は虫食い状態になり、全体に表面はザラザラで、掌で擦ると怪我をします。
by 村尾鐵男 (2012-03-27 21:02) 

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