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原発再稼働から逃げ回る政府の罪 -4/4 [明治維新胎動の地、萩]

                      .by N.Hori

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(WEDGE・20124月号)の抄訳

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 そこで、法律は原子力事業者に無過失責任を課した。同時に、損害の見積もりも困難であり、過失相当の賠償ということもないため、責任額に上限を設けない無限責任も課した。

これが無過失無限責任である。しかし、無過失無限責任という厳格極まりない規定は、一定の付随条件が整っている限りでのみ適用可能な極めて特殊なものである。

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その条件の第一は保険制度である。事実、法律の第8条は保険制度を定めているが、損害の予定額を1200億円としていたので、今回は意味のあるものにならなかった。しかし、例えば5兆円を予定して保険を組んでいたら、保険料が高額になり、原子力発電は経済的に成り立たなくなっていたであろう。保険には経済的な限界がある。

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そこで、第2の条件としての社会保障である。原子力発電が政策であり、国民の選択である以上、原子力事業者の単独の力では負担しきれず、保険でも賄いきれないところは、社会保障として、つまり政府負担(要は国民負担)としようということが第16条支援の意味だと考えられる。さらに第3の条件として、第3条但し書きの「異常に巨大な天災地変」によるによる免責があったのだが、今回の場合、著しく大規模な天災であったにもかかわらず、但し書きの免責は否定された。同時に著しく大規模な天災の故に、保険制度が十分に機能しなかった。この制度設計の穴を埋めるのは第16条支援以外にはない。

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このように無過失無限責任の意味を考えれば、政府対応の問題性が見えてくる。

第1に、第3条但し書きによって東電を免責にすべきだったのではないか。第2に、免責を否定したのであれば、第16条支援についての政府責任の正当な果たし方を国民に提示する必要があったのではないか。免責の可否については様々な視点から論じ得るのだが、私は社会的公正さに関する良識の働きを重視したい。当事者の東電は被害を直視した時、社会的公正を直観し、良識を働かせることで賠償責任を認めたのである。法律的に免責の可能性が残るにもかかわらず、補償されるべきと観念された損害を前にした東電の良識を評価したい。

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私が問題にしたいのは、第16条支援のあり方である。ここには、社会保障機能があるべきであり、政府と東電との間に公正な負担分担があるべきなのだ。

 私は、原子力事業者の経営の独立を守りつつ電気事業継続のための資金調達の道を確保することをもって、第16条支援の目的と考える。

その意味で、国有化も法的整理も不当である。民間事業の収益性を活かすからこそ、政府の言う「国民負担の極小化」が実現するのである。国営事業の収益性で賠償原資を作るのは国民負担の極大化になる危険をはらむであろう。このような不当な政策を糾すためには、政策の誤りによって不当な損失を受けた者がその損失の賠償請求を政府に行うことが必要である。                                

                                       完


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夏炉冬扇

お早うご゛さいます。
萩、すぐ近くに椿の原生林があります。今満開でしょう。
by 夏炉冬扇 (2012-03-26 08:55) 

村尾鐵男

私の記憶では、当時の菅首相と枝野官房長官は、昨年3月11日の地震と津波を「異状に巨大な天災地変」とは認めませんでした。
あの大地震と大津波を「異常に巨大な天災地変」と認めないのなら、どの程度の地震津波を異状とするのか。
理屈以前に、菅、枝野の両人は東電に何か怨恨を抱いているのではなかろうかを推測します。たとえば、政治資金の寄付を断られたとか、その昔、子供の就職を断られたとか。
政治の裏は報道も躊躇うドロドロの世界で、はるかに低い時限と意識で物事が動いています。
by 村尾鐵男 (2012-03-26 11:33) 

n.Hori

あゆさこさん、夏炉冬扇さん、rtfkさん、アルマさん、niceを有難度うございました。夏炉冬扇さん、村尾さんコメントを有難度うございました。ご指摘のように萩には椿の原生林があります。今、満開でしょう。 現役時代の仕事仲間(サン精機・HPで紹介しています)が、萩の椿の実から油を採る搾油機を開発し、純粋の椿油も作って、販売しています。



by n.Hori (2012-03-26 22:06) 

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