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創作短編(41):支倉長徑、後に常長 -3/8 [稲門機械屋倶楽部]

                                     2012-03 WME36 梅邑貫

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「六右衛門、心細い面構えであるのう」

「はっ。某(ソレガシ)、エスパーニャの言葉を知りませぬが」

「案ずるな、六右衛門。ルイス・ソテロを存知おろう」

「はっ。吾等と同じ言葉をよう話され、時折お会い申しおりまする」

「そうか。あのルイス・ソテロを正使と致し、六右衛門、その方はルイス・ソテロより三歳年上なれど、副使を務めるのじゃ」

「はっ。しかしながら、殿、交易の段取りと申されまするが、某は如何にしてエスパーニャヘ参りまするか」

「うん、肝心のことを忘れておったのう。遣欧使節として恥とならぬ大船があるのだ。エスパーニャ国王に会うて、交易の取り決めを致すのじゃ。さらに、キリシタンの総本山であるローマとやらへも参り、キリシタンの宗主とも会うて、交易の取り決めを致す」

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 ルイス・ソテロ(Luis Sotelo:1574-1624)はエスパーニャのセビリヤ生まれですが、フランシスコ会の宣教師となってフィリッピンへ渡りました。

当時のフィリッピン、日本ではルソン(呂宋)と呼び、少なからざる日本人が交易のために渡り住んでいましたが、ルイス・ソテロはマニラ近郊に住む日本人を布教の相手とし、その日常を通じて日本語を習得しました。

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 慶長八年(1603)、ルイス・ソテロはフィリッピン総督の親書を携えて日本を訪れ、家康と秀忠に拝謁して日本での布教を許されました。特に伊達政宗とは親しくなり、仙台藩の江戸表屋敷や仙台をしばしば訪れて、仙台藩の藩士にも覚えられていました。

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 慶長十七年(1612年)、支倉長徑と百八十名ほどの仙台藩藩士はルイス・ソテロと共に、スペインの商船サン・セバスチャン号に浦賀で乗り込み、勇躍して太平洋横断の壮途に就きました。

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 ところが、このサン・セバスチャン号は浦賀を出航して直ぐに、暴風に遭遇して座礁してしまいました。浦賀を出航したのは慶長十七年の何時なのか、座礁してどのように助けられて何処へ上陸したのか、残念ながら諸説あって確言できません。

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ぼくあずさのComment

村尾さんの記事を読み、支倉常長の慶長遣欧使節のスペイン、ローマへの訪問は徳川家康(1543-1616年)が伊達正宗に命じたこと。そして、月ノ浦-メキシコ・アカプルコを往復した「サン・ファン・バウティスタ」の前に使節がスペインの商船サン・セバスチャン号に乗り浦賀を出港したことを知りました。

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私の理解は

オランダは1581年にスペインから独立

1588年、スペイン無敵艦隊は英国侵攻戦に大敗

1601年、家康はヤン・ヨーステン(オランダ人)とウイリアム・アダムス(英国人)から西洋列強の最新情報を得て、出島を作らせた

1602年にオランダ東インド会社を設立

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家康が大型帆船多数をもつ商業国家オランダと通商をしたのは理解できるのですが、衰えの見えるペインに何故使節を送ったのでしょうか。


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コメント 3

ぼくあずさ

村尾さん
サン・セバスチャン号の遭遇の件は幕府により記録が消された
のでしょうか。貴兄の解説で激動の時代だったことがよく分かり
ました。多謝。
by ぼくあずさ (2012-03-21 19:12) 

梅邑貫

徳川幕府が長崎に出島を造営したのが寛永十一年(1611年)で、ここに寛永十八年(1641年)から安政六年(1859年)までの220年ほどの間、出島和蘭商館がありました。
徳川幕府が長崎を和蘭貿易の拠点としたのは、それまでポルトガルとの貿易を独占していた平戸藩から西欧との貿易権を奪うためでした。
一方、スペインは呂宋(ルソン)、即ちフィリッピンまで来ており、スペインの力が次第に衰えつつあったとは言え、宗教を背後にして強力な貿易攻勢を掛けていました。
徳川家康は当時の武将としては極めてバランス感覚に恵まれていたので、オランダのみに傾倒することなく、スペインとの交易にも道を拓こうと考えていたと想われます。
サン・セバスチャン号の遭難は、私が調べた限り、徳川幕府の記録に残っています。しかし、日本語の達者な者が乗っており、日本に敵対する行動を採らなかったことから、極めて穏便に対応しています。
by 梅邑貫 (2012-03-21 21:51) 

ぼくあずさ

梅邑貫さん
徳川家康が今の日本には必要なのかと思います。
by ぼくあずさ (2012-03-21 23:52) 

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