SSブログ

アトキンソン・サイクル・エンジン -6/6 [稲門機械屋倶楽部]

                                   2012-01 WME36 村尾鐵男

.

自動車ジャーナリズムの誤謬

.

 ミラー・サイクル・エンジンの普及のためか、ミラー・サイクル・エンジンをアトキンソン・エンジンの一種とする論調が自動車関係の雑誌等に多いのですが、私自身は納得できません。

 ミラー・サイクル・エンジンとアトキンソン・エンジンは構造がまったく異なっており、しかもアトキンソン・エンジンの方がミラー・サイクル・エンジンよりも半世紀以上も早く世に現れており、この両者を同類とするのは技術的に無理が多いと考えます。

.

数多くの自動車雑誌が「圧縮比の高いエンジンは高性能」と論じますが、通常のエンジンではたまたま圧縮行程のピストン移動距離と容積が膨張行程の場合と同じであることから、このような表現が現れています。しかし、熱力学第二法則に従えば、膨張行程のピストン移動距離が圧縮行程の場合より長いとエンジンの効率は向上します。

 今、アトキンソン・エンジンを搭載していると宣伝しているホンダ以外の車種もあります。しかし、カタログをよく読むと、それはミラー・サイクル・エンジンです。先に述べてように、ミラー・サイクル・エンジンをアトキンソン・エンジンの一種、或いは同類と見做す技術上の詐称のように私には思えます。

.

 アトキンソン・エンジンを搭載したホンダ「フィット」の性能諸元が判らず、具体的な論評ができませんが、本物のアトキンソン・エンジンはその機構の複雑さ故に、おそらく回転数を高く上げることができないでしょう。

 ホンダと言えば、小排気量エンジンを1万回転ほどの高回転で馬力を高めることで世に現れました。しかし今、燃料を無制限に消費し、排気ガスで環境を脅かすことは許されません。

 アトキンソン・エンジンで熱エネルギーを機械エネルギーへ変換する効率を高めることは大いに歓迎されることです。しかし、そのために馬力とトルクが不足することがあるかもしれません。

 最近の自動車雑誌も、一頃のように馬力至上主義に傾くことはありませんが、自動車を走らせるときに欠かせないのはトルクです。そのトルクを補う方法としてターボ・チャージャーやスーパー・チャージャーがあり、IHI(石川島播磨重工)が製造する自動車用の小型ターボ・チャージャーやスーパー・チャージャーも世界に冠たる製品で品質の高さを誇っています。

日本の最新技術を結集したホンダ「フィット」の欧州市場での健闘が期待されます。


nice!(5)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:blog

nice! 5

コメント 1

ぼくあずさ

村尾さん
貴論文は恐らく独仏英中韓語に翻訳され、多くの技術者が密かに読むと
推察します。非常感謝和辛苦了。
by ぼくあずさ (2012-01-21 02:30) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。