アトキンソン・サイクル・エンジン -2/6 [稲門機械屋倶楽部]
2012-01 WME36 村尾鐵男
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オットー・サイクル
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ドイツ人技術者オットー(Nikolaus August Otto: 1832-1891)が、今の私達がよく知っている4ストローク・サイクルのエンジンを考案して1884年に試作に成功しました。
偉大なるフランス人物理学者カルノーは熱力学の祖であり、内燃機関の理論的基礎を築きましたが、圧縮・燃焼と膨張・排気・吸気の4行程、即ち、4ストローク・サイクルの具体的な技術的考案には至っておらず、実物の4ストローク・サイクルのエンジンを作り上げたのはオットーでした。
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このオットーのエンジンは1877年に特許を取るのですが、これに異議を唱えた者がおります。フランス人技術者ルノアールです。かの有名な画家のルノアールではなく、ベルギー生まれのフランス人技術者Jean Joseph Etienne Lenoirです。
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今では私達も忘れておりますが、ルノアールは1858年に世界で最初に2ストローク・サイクルのエンジンを作っており、当時の燃料は照明ランプ用のガスでした。
このルノアールが、何時のことかよく判りませんが、オットーよりも先に4ストローク・サイクルのエンジンを作ったと主張したのですが、これは事実と認められています。
しかし、世間では「オットー・サイクル」の名で知られる実用エンジンが、それまでの水車や蒸気機関に代わってその簡便さ故に急速に普及しました。
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熱力学第二法則を再度思い出して下さい。エンジンの熱エネルギーを機械仕事に変換する効率は燃料の燃焼温度と排気ガスの温度の差が大きいほど高いので、燃料が燃焼した後の膨張を大きくすればエンジンの効率も高まります。
しかし、これも私達にとっては半ば常識となっていますが、エンジンの圧縮行程と膨張行程はピストンの移動距離は同じで容積も同じです。ですから、効率を高める手段は圧縮比を高くしましたが、ノッキングの壁が聳えていて、限界がありました。
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