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夢を追う男たち -8/18 [北陸短信]

                                      .by 刀根 日佐志

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ガソリンスタンドやドライブインなどで、「営業中」「本日閉店」と通行客に明示するプラスチック製の看板を、荘一は街中で見ることがある。それは、彼が開発販売しているものだという。

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「ところで、鯵川さんの発明した看板を、よく見かけますね」

「お蔭様で売れております。あれは店先に置くだけで誘客に貢献します」

鯵川は、大通りに面したガソリンスタンドや商店を営業して歩いたという。十軒歩くと、興味を示す店が五軒はあったらしい。

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「必ず聞かれるのは、(いくらですか)の問いです。考えている価格に近ければその場で買ってくれます。決定権のある方が店内にいることが大事です。今は塵ボックスと生簀水槽を開発して料亭などに販売をしております。これも順調に進んでおります」

「そのようなアイデアはどこから生まれるのですか」

「自分は忍法を修業してますので時々、山にこもり精神統一します。そうすればアイデアが浮かんできます」

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 彼はエネルギッシュに思わせる脂ぎった額のしわを、深く刻むと微笑んで見せた。

「忍法を心得ているのですか」

 荘一は身を乗り出して彼の口元を見詰めた。

「自分は若いときから、忍法を修行してきました。以前にテレビの番組でイレブンピーエヌという番組に出ました。そして飛んでいる鳥を落として見せました」

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 荘一は商品開発のことより、この話の方が詳しく聞きたかった。だが彼は生簀水槽の発明にいたった経緯と販売方法を事細かに説明しだした。

 精神統一すれば「お告げ」があるという。色々なアイデアや販売方法はそこから生まれてくるという。


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