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菜根譚  -2/10 [稲門機械屋倶楽部]

                                          2011-09 WME36 村尾鐵男

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與人不求感徳、無怨便是徳。

人に與(アタ)えて徳に感ずることを求めず、怨み無きは是便(スナワ)ち徳なり。

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 人に恩を与え、その恩に感謝してもらおうとは考えるな。恩を与え、怨まれることがなければ、それが徳である。

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 私自身が「菜根譚」を読んだのは三十代半ばの頃ですが、漢詩等の他の書と大きく違うことを発見しました。

 それは「菜根譚」に記される文章が総て短く平易簡潔であることでした。だからこそ江戸時代以来の日本で好んで読まれました。さらに、「菜根譚」の著者である洪自誠は道と老荘、即ち朱子学、さらに仏教の教えにも十分な学識を有していたようで、この道・老荘・仏教の三教一致を処世訓とし、その集大成が「菜根譚」となりました。尚、道は道教ではありません。

 日本人である私達には、「菜根譚」の根底となる思想を自ずと理解し、それを善とする暗黙の了解がありますから、「菜根譚」は静かにではありますが、日本人の心の内へ浸透し、特に江戸時代には「菜根譚」の簡潔さが歓迎され、禅僧に好んで読まれました。ここでは、その簡潔な文をさらに短く記します。

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人情反復、世路崎嶇。

人情は反復し、世路(セロ)は崎嶇(キク)たり。

人情は移ろい、世渡りの道は崎(ケワ)しく嶇(マガリ)くねっている。

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「政界は一寸先は闇」との有名な言葉がありますが、政界に限ったことではなく、私達が生活する現代の世相もまさに「人情反復、世路崎嶇」で、四百年ほど前の洪自誠の時代と少しも変りません。それは、おそらく人間そのものが変っていないからであろうと思いますが、年齢を経ると年月の流れが速く感ぜられるのも、「人情反復」がより素早く見抜けるようになった結果であろうとも思われます。


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