日本の情報収集衛星 -1/3 [稲門機械屋倶楽部]
2011-09 WME36 村尾鐵男
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私が迂闊にも見逃したニュースがありました。3月11日、東北地方に巨大な地震と津波が襲い、東京電力の福島第1原子力発電所が冷却機能を失って水素爆発を起こし、原子力発電システムの一部と建物が破壊されて、高濃度の射線を近隣一帯に漏洩させました。
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建物の内部は、又、原子炉は如何なる状態にあるのか。誰もが知りたいことですが、放射線が漏れ続ける環境下では誰も近着くことができず、建物の中へ入ることはそれこそ〈想定外〉でした。
暫しして、政府がアメリカの商業衛星運用会社から買った写真が公表されました。どれほどの高度から撮影したか不明ですが、原子力発電所の建物が無残に破壊され、内部はそれこそ足の踏み場もないような光景が写っていました。
この衛星写真を政府は45万ドル(≑ 3,600万円)を払って買ったそうです。このニュースを私は見逃しました。
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さて、ここからが本題です。実は日本にも日本製の情報収集衛星(IGS: Information Gathering Satellite)があって、現に四基が運用されています。
2003年3月に最初の二基が打ち上げられ、次に失敗があり、2007年9月に追加の二基が打ち上げられて、今は四基態勢です。
この情報収集衛星は北朝鮮の弾道弾打ち上げを我が国の安全保障の観点から放置できぬと考えた日本政府が決断したもので、実態は軍事偵察衛星、或いは俗にスパイ衛星と呼ばれるものです。
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目下運用中の四基の情報収集衛星には、四基総べてか、後から打ち上げた二基だけかはっきりしませんが、合成開口レーダー(SAR: Synthetic Aperture Radar)が搭載されており、勿論、通常の光学レンズによるカメラも装着されています。
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光学レンズによる地上の解像度は10mとか20mと言われますが、SARの解像度は20cmとか10cmになります。これだけの解像度を通常のレーダーで得るには、レーダーのパラボラ・アンテナの直径が1000mほどにもなって、衛星には搭載できないので、通常のレーダー・アンテナを使い、位置を僅かにずらして撮影し、地面の凹凸を捉えて解像度を飛躍的に高めています。
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