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平時の論理で有事に対処、日本の破綻 -2/3 [明治維新胎動の地、萩]

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 東日本大震災は日本人に対し、国家の役割について、かってない深い問いかけを迫った。

「国家は何のためにあるのか」。その究極の目的は言うまでもなく、「国民の命を守ること」である。そのためにこそ国家は存続しなければならず、それに必要な領土や主権、政府機能の維持が不可欠になる。さらにそれらを支える国民生活の豊かさや伝統・文化も重要となってくる。これらは当たり前のことなのだが、この問いかけに答えることが出来ない現代日本の「国家としての惨状」を、今回の震災はまざまざと見せつけることになった。

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 ここには、「戦後日本」という特殊の空間の中でも国家が成立しうる、と考えてきた国家構想の破綻が明らかになっているのではないか。国家としての戦後日本は、どうやら「最終的な破綻の回路」に入ったのではないか。この大震災が我々に突きつけているのは、これだと私には思える。

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 3月17日午前、ロシア空軍の情報収集機「IL20」が東北地方の日本海側を南下した。領空侵犯のおそれあり、と航空自衛隊機がスクランブル発進し、同機は昼過ぎにロシア方面に飛び去った。震災の真っ只中、日本が対応能力を欠いていることが誰の目にも明らかなタイミングでの挑発行為だった。当時、太平洋側では、原子力空母をはじめとする米軍が本格的な救援活動を展開していた。ロシア機は日米共同対応を偵察する目的をもって飛来したとみるのが自然だ。

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危機対応時は言わば「敵のいない戦時」であり、国際情報戦では「絶好のかきいれ時」である。無線の暗号を切り換える頻度、報告のタイミングなどを収集することで、米軍の戦時マニュアルを再現することが出来る。これが国際社会の常識であることを我国の政府だけが知らなかったことだ。政府の姿勢は外相の記者会見の発言に象徴される。

「各国からお見舞いの言葉や支援の申し出を頂いているという気持ちを信じて、お付き合いしていくのが今の私どもの立場だ」とロシアに抗議しない考えを示した。これには私(中西)も言葉を失った。「日本が弱っている時に何をするんだ」と強い抗議でアピールすれば、国際世論の理解と同情を集め、少なくとも震災の最中は、他国からの挑発を受けずに済んだであろう。

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案の定、翌週にロシア機は再び日本の防空識別圏に侵入した。また、3月26日と4月1日には、中国機が東シナ海の公海上で海上自衛隊の護衛艦に繰り返し異常接近する事態も招いた。

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 震災後に露呈した、想像を超えた菅政権の対応の甘さや国家としての機能の低さが、世界にも衝撃を与えている。その最大の犠牲者は言うまでもなく日本の国民、とりわけ被災者たちだ。

原発対応、被災者への救援、被災地の復旧支援など次々と失態を重ね、日本の国家中枢が炉心溶融していたわけである。そもそも、これだけ大規模で激甚な災害に遭遇した以上、本来ならば、「国家非常事態」を宣言し、平時の法体系とは別の体系に移行して対応しなければならなかったのだ。

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 しかし、戦後日本の憲法には、そんな条項は存在せず、従って、非常法体系も備わっていなかった。ただ、現行法にもある災害対策基本法に基づいて、首相が「災害緊急事態」を布告すれば、同じようなことは出来たが、それも一切とらなかった。


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