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還って来た日々 -5/25 [北陸短信]

                                刀根 日佐志

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川岸に、皆はランドセルを放り投げ、次々に服を脱ぎ捨て真っ裸になると、いち早く川に入った。川に入るまでの早さが競争である。最初は楓の木の所に着くまでを競ったが、いつもトシオが早かった。ボウはいつも、一番後からついて来た。

「明日から、川に入るまでの早さにしまいか」

 負けず嫌いのナミは、何とかして勝つ方法を考えていたのであろう。真剣な顔で、口を尖らせながら新しい提案をした。

「そーや、そうしまいか(そうしよう)」

 三郎も同意し、翌日からやり方を変えても、トシオは服を脱ぐのも素早く誰も勝てない。

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 皆は川に入ると足をバタバタさせて、手の平を前後に水を掻くガメ泳ぎで泳いだ。誰から習ったこともなく、見よう見まねで泳いだ。次の泳ぎを覚えるのが皆の目標で、平泳ぎも練習した。三郎は平泳ぎで五メートルも泳ぐと足をつけ、また泳ぐ。団栗の背競べで、まだ長い距離を泳げるものがいなかった。ボウの泳ぎは、手足をバタバタさせているだけで進まない

疲れると、川原の砂利の上に寝そべった。最初は背中の方を空に向け、裸で寝た。背中が乾くと、今度は顔を日光に向けて寝そべる。太陽の周りの白く薄い雲が去ると、ぎらぎらした日差しが目に入り眩しく、三郎は手の平で顔を覆う。少しでも光が目に入ると、眼球が焼け付いたように、しばらくは辺りの景色がぼやけて見える。

 だれかが声を上げた。

「わしのチンポに、石投げたの誰や!」

 目玉をぎょろつかせ、怒りを剥き出しに、抗議の叫び声を出したのはボウであった。小石を投げた者がいたらしい。

「わしじゃない!」

「わしでないぞ!」

「わしも知らんちゃ」

口々に叫んだ。

「トシオやないか。あいつ笑うとる(笑っている)」

誰かが言った。トシオは細い顔の頬に両手を当てて、摩るような恰好をして笑いをこらえている。

もうトシオが、俺だと白状しているに等しい。

「トシオや、トシオや!」


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