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ビルマ行 -4/9 [和田の泊りより]

                                                                                By 月川善雄

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紅茶の方はありがたく頂戴したのだがそうこうしているうちに座っている太腿の裏側が痒くなって来た。後で見ると南京虫に噛まれているのである。経験の有る方はお分かりと思うが南京虫に噛まれるとその部分がしこりになりかゆくて堪らないのだが掻くと非常に痛いというまことに手の焼ける代物なのである。まさか総裁室の椅子にそんなものが巣食っているとは夢にも思わなかったので無防備であったのだが南京虫は木材の割れ目に潜んでおり体温を感じると這い出して来て凶行に及ぶらしい。ビルマは高温多湿なので椅子も木製のものが多い。以前に同鉄道に輸出した二等客車の椅子も木製のベンチで防蟻処理を施した木材を使用していた。映画館などでも同じような木製のベンチが使用されており南京虫対策は新聞紙を敷くことだそうだ。印刷インクの油を嫌って南京虫が近寄らないとのこと。また日野自動車の工員さんなどは油のしみた作業服を着てゆくとこれも南京虫除けになるとの話しをされていた。

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機関車の方の話は順調に進み最終的には契約出来たのだが ある日UBRが夕食をご馳走して呉れるということになり本来ならば我々の方がお客であるUBRを接待すべきところであるが折角の話でもあり またこちらがやると汚職だ、スパイだのと痛くも無い腹を探られることにもなり兼ねないのでUBRの一室で有難く御もてなしに与った。 たしか立食パーティ形式で何が出されたのかは もはや憶えていないが途中でいきなり愛国行進曲のレコードが鳴り出した。「見よ東海の空明けて旭日高く輝けば・・」のあれである。思い掛けないことなのでビックリしているとビルマ人のほうはみなゲラゲラ笑っている。よくよく聞いてみると替え歌があってなんでも“日本の兵隊さんがやって来て いいことをして子供を作って帰っちゃった”というような意味の一寸卑猥な歌らしい。そして彼らは日本人が忘れてしまったような軍歌を覚えており他の東南アジアの諸国で見られるような日本軍に対する悪意などは全く持っておらず悪いのは英軍でビルマのあちこちを爆撃したなどと言っていた。

そして先ほどの替え歌に出てきたような日本人との間に出来た子供も優秀なのが多く、そしてビルマまでがアジアでこれから西はアジアではないと強調していた。確かに顔つきからしてビルマ人はアジア系だと思うし、これから西のバングラデシュへ行けば所謂外国人顔になる。


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村尾鐵男

私はバングラデッシュを二度訪ねましたが、あの国も南京虫の王国です。ただ、椅子は籐を蜂の巣のように編んだ籐椅子で、座る前に椅子を持ち上げて力強く床へ叩きつけて南京虫を払い落とします。これはバングラデッシュ国営航空会社の総裁室での遠慮のない所作ですが、さらに籐椅子に新聞紙を敷きます。南京虫は新聞印刷用のインクが嫌いだとのことです。でも、ズボンが黒くなって困りました。
子供の頃の北京でも南京虫には悩まされました。今や日本人の大半は南京虫を見たことがないのですが、大麦を平たく潰したような形の虫で、動きは鈍いので、見つけたら裁縫用のマチ針で突いて、壁に打ち付けておきます。
by 村尾鐵男 (2011-07-16 06:43) 

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