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迫撃砲の静かな進歩 –3/5 [稲門機械屋倶楽部]

                                                        2010-12-02 WME36 村尾鐵男

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クラスター弾禁止の影響

 クラスター(Cluster)弾とは、集束爆弾とか、古くは親子爆弾とも呼ばれましたが、通常の砲弾ケースの中に小型の砲弾を10個から40個ほどを詰め込んだもので、爆撃機から投下する爆弾だけでなく、ミサイルとか通常の砲弾もクラスター化されたものが多数あります。このクラスター弾は危険であり、非人道的であると指摘されて、その使用を廃止しようとの国際的な動きがあって、2008123日、オスロ会議で日本は「クラスター弾廃止」条約に署名しましたが、その数日前の1128日には自衛隊が保有するクラスター弾の総てを廃棄すると決めました。

 クラスター弾が危険で非人道的であると指摘されるのは、砲弾一般に共通する不発率に拠ります。爆弾であれ、ミサイル弾であれ、砲弾であれ、不発率は5%から40%であると言われ、技術的な通念で判断すると、この不発率の高さは驚くべきものです。特に、爆弾では子爆弾を広く散布するためにパラシュートで投下し、敢えて遅い降下速度で落下させ、その間に広範囲に子爆弾を撒き散らすのですが、降下速度が遅いために爆弾の下方先端に装着した信管が目標物に接触しても作動せずに不発弾となることもあります。又、パラシュートが木の枝に引っ掛かり、そのまま不発弾となることもあり、この不発弾に子供が触って誘爆させてしまうこともしばしばです。又、予備の爆弾や砲弾として長期間保管されている間に、時間経過によって劣化して不発となることも考えられます。

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 ともあれ、不発率の高さを補うために考案されたクラスター弾が禁止となり、その結果として不発率を下げるための開発が始まり、それがGPS誘導装置の砲弾への組込みとなりました。

 イラクの砂漠に建つ泥レンガの家屋を破壊するために雲霞の如く砲弾を撃ち込み、しかも砲弾の一部が周辺部落へも弾着して非難された米国軍が、今は僅か数キログラムの小型砲弾を1発だけ撃ち、正確に建物内で爆発させて、周辺への被害を無くすことに成功しています。

 GPS誘導装置を砲弾や爆弾に組込んで飛躍的に命中率を改善した結果、砲弾の予備量も大幅に減らすことができたと伝えられます。

 私には計算の基になる基礎数値と計算式そのものを見つけることができないのですが、砲弾の予備量が多くても従来の5分の1、多数の予測は7分の1とか8分の1としています。仮に砲弾予備量が5分の1に減じたとしても、驚くべき減少率であります。

 又、予備品を長期に及んで保管するには大きなコストを要しますから、爆弾と砲弾の予備量が減り、これを前線へ補給する量も減れば、国防費の節減に寄与するところも大であります。


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ぼくあずさ

オスロ条約にアフガニスタン政府が調印直後に、米政府からアフガン国内での使用を認める要請をしていた’署名なし)ことが、Wikileakで暴露されました。
by ぼくあずさ (2010-12-05 11:46) 

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