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迫撃砲の静かな進歩 –4/5 [稲門機械屋倶楽部]

                                                            2010-12-02 WME36 村尾鐵男

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イラクからアフガンへ

 米国陸軍のイラクでの戦いは主として市街戦で、至近の距離での銃撃戦でもありました。ところが、アフガンへ移って様相が一変し、市街戦はなく、山岳地帯で長い距離を挟んだ戦いとなり、山々の木陰に隠れるゲリラに歩兵が持つライフル銃では照準も定まらず、迫撃砲にも距離が遠すぎて命中率が上がりません。

 不穏当な表現ではありますが、市街戦であれば、イラクの街はそれほど大きくはありませんから、米軍が得意とする膨大な「鉄火量」の投入で街ごと潰してしまえば済むことでした。しかし、この戦法はゲリラに非らざる一般人も巻き添えにして殺傷するので大きな非難を受け、それに加えて、土壁の家屋に向かって高価な誘導ミサイルや誘導爆弾を使うので、いかな米国でもそのコスト・パーフォーマンスの悪さに音を上げました。

   アフガンでは市街そのものが殆ど無く、山岳地の樹間や洞穴に潜むゲリラには、イラクで習得した戦法が通用せず、ゲリラと一対一で対応する過酷な戦闘を強いられ、その戦訓を活かして、米国陸軍は新たな迫撃砲を開発しました。

口径120mmの新型迫撃砲は砲弾にGPS誘導装置を付け、射程7km8kmで、”CEP”は驚く勿れ、僅かに6mで、今年中にはアフガンで戦う部隊へ供給されると伝えられていましたから、今頃はこの驚異的命中率を誇る新型迫撃砲が使われているかもしれません。歩兵部隊の観測員が、たとえば敵陣地や弾薬集積場所の位置をレーザー測距器で距離と方位を正確に測定し、この情報を砲弾に取り付けたGPS誘導装置に入力して発射するだけのことですが、”CEP 6m” の性能は驚くべきものであります。

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既にお気着きの方もおられようと思いますが、私は砲のことばかりを書いて、砲弾については触れておりません。迫撃砲はその重量が30kgほどですから数名の歩兵によって運べるのですが、砲弾は別の悩みでもあります。

迫撃砲の砲弾は2kgとか3kgの重さしかなく、一人の兵士が軽々と持って砲口へ装填することができるのですが、何しろ命中率の低い迫撃砲ですから、1分間に1発を撃ち、3時間も撃ち続ければ180発の砲弾が必要になります。

砲兵隊は重い砲を移動させるのも大変ですが、砲弾を砲の近くに積み上げるのにも大変な苦労が伴い、歩兵隊の迫撃砲も同じ困難を抱えます。

しかし、”CEP” が6mの迫撃砲なら、最初の二弾ほどを撃てば敵陣地を沈黙させることが可能で、従来のように多量の砲弾を盲撃ちする必要がなくなり、歩兵の戦闘に革命がもたらされました。歩兵小隊は標準的には20名の将兵で構成され、これを二班に分けて行動します。一班10名の歩兵部隊の内、3名が迫撃砲そのものを運び、残りの者が2発ずつの砲弾を持てば、今までとは比較にならない戦闘力を歩兵部隊が持てるようになりました。


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