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Electromagnetic Rail Gun(電磁レール砲〉 [稲門機械屋倶楽部]

                                     2010-08-11 WME36 村尾鐵男

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御記憶の方も多かろうと思いますが、昭和58年(1983年)3月、ときのロナルド・レーガン米国大統領がSDI(Strategic Defense Initiative)構想を世界に向かって公表し、軍事技術で当時のソヴィエト連邦へ挑戦状を突き付けました。このSDI構想は世間ではStar Warsとも呼ばれたのですが、宇宙空間にあるソ連の衛星を破壊してソ連の偵察能力を殺ぎ、次に宇宙空間からソ連の地上軍用施設を狙い撃ちにするものでした。

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この技術競争にソ連の経済力が堪え切れず、19911225日、奇しくも欧米のクリスマスの日にソ連大統領ミハイル・ゴルバチョフが辞任し、ソ連邦は崩壊しました。

冷戦の終結により、SDI構想は自然消滅しますが、このSDI構想の中に,レール・ガン(Rail Gun)と称されるものがあり、宇宙空間から地上目標を正確に砲撃するための発射台として鉄道線路のようなレールを使うものであり、平行度の優れたレールを必要とすることから、加工精度の高いレールを製造する日本の製鉄各社へ米国国防総省から密かな引き合いが寄せられたとの噂がありました。

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今、このレール・ガンが復活しつつあります。2008131日には米海軍が実証射撃に成功し、BAE System社とかGeneral Atomic社のような主要兵器製造企業も自社実験を含めて積極的な動きを見せております。

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皆さんは、確か中学時代に習った「フレミングの左手の法則」を御記憶であろうと思いますが、電磁レール砲はこのローレンツ力(Lorentz Force)を応用したものです。平行に並べた2本のレールの間に砲弾を載せた可動架台を置き、レールに電流を流すと、磁界が生じて架台が砲弾と共に高速で移動して砲弾を発射します。

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米国海軍は、電磁レール砲は従来の砲に較べて射撃効率が20倍ほど高いと考えているようです。射撃効率が具体的に何を指すのか不詳ですが、初速の高いことによる遠距離射撃と砲弾の破壊力の大きさであろうと察せられます。又、射撃の方法としては二つの場合が考えられております。一つは打ち出された砲弾を約150kmの大気圏外の高度まで上げてから目標を射撃する方法で、射程は300kmを越えると伝えられます。もう一つは水平射撃に近い射撃方法で、電磁レール砲の一発が通常の砲の20発ほどの威力を発揮するとも伝えられます。

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Railgun_usnavy_2008.jpg米国海軍は電磁レール砲によって発射される砲弾の初速を通常艦砲の8倍に近い音速の7倍を実現させようとしていますが、そのためには高速射撃に耐えられる材料の開発と大きな電力供給を可能にしなくてはならず、実用化までにはかなりの年月が必要と思われます。

写真は20081月の米国海軍による実証射撃のときのものです。

                                 (了)


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