詩経、最古の規範集 -7 [稲門機械屋倶楽部]
2010-07-12 WME36 村尾鐵男
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【天命玄鳥 降而生商】
〔天、玄鳥(ゲンチョウ)に命じ、降(クダ)って商を生む〕.
「玄鳥」とは燕のことで、古代中国では燕が吉兆を呼ぶ瑞鳥として観られていました。
この文は古代中国の始まりとも言える商王朝の誕生を物語るもので、伝説でもありますが、天命によって新たな王朝が創設されたその正統性を言わんとするものです。
商王朝の先祖である契(セツ)がこの世に生まれた経緯があります。契の母親となる女性、名は簡狄(カンテキ)と伝えられていますが、この女性が、或る日、燕が卵を産み落としたのを見て、この卵を奪って飲んだところ、間もなく懐妊し、やがて産まれたのが契であったと伝説は伝えています。その後、契は長じて帝王尭に仕え、その才と手腕が評価されて商へ封ぜられたとするものです。.
話は詩経から逸れますが、古代中国と古代朝鮮半島には、帝王とか王朝の創治者が鳥の卵から生まれたとする伝説が多いのですが、これは日本の伝説では見掛けないことです。特に朝鮮半島ではこの種の伝説が多く、私達日本人から観ると、極めて奇異に感ずるところです。
日本の皇統は朝鮮半島にその出自があると信ずる研究者や政治家がおりますが、日本に於ける神代の伝説に天皇家の祖先が鳥の卵から生まれたとする記述はありません。.
詩経は秦の始皇帝が行った悪名高い焚書坑儒の災難に遭っていますが、漢の時代になって復元されました。他の項でも記しましたが、詩経のように古い文は紙に書かれたのではなく、短冊状に加工された竹や木の板、即ち竹簡や木簡に文字が彫り込まれていたので、土中や泥壁の中に埋めて隠してあったものは、始皇帝の目を逃れて後世に残りました。.
【昊天有成命】
〔昊天(コウテン)成命(セイメイ)あり〕.
昊天(コウテン)とは天の神で、成命(セイメイ)とは天の神が命じ下す掟です。努力して善政を心掛ける者には幸いがあり、成命に反する行いを為した者に昊天は味方しないとの意味です。
今、参議院選挙の翌朝にこの項を書いておりますが、成命の「掟」に反した政治家を昊天は見放したようです。
(完)
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