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航空工学基礎講座(6) [稲門機械屋倶楽部]

-社会学的観点に立つ入門編-  (2009MEW36 村尾鐵男記) 

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〈余談〉

今でこそあまり聞かなくなりましたが、私共が駆け出しの頃は「デミング賞」が大流行でした。英国人とも米国人とも聞いておりますが、William Edwards Demingが統計学を駆使して打ち立てた品質管理手法で、戦後間もなくの日本に多大な貢献をしました。   

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私も社外の品質管理講習会に度々行かされましたが、今も印象に残っているのは講師を務められた松下電器の唐津一氏です。製品の品質を向上させることが、保証期間中の無償修理を如何に減らせるか、その結果、如何に多額の経費を節減できるかを豊富な実例で力説され、なるほど、なるほどと理解できました。 

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日本の工業製品がその高い品質なるが故に世界中で注目され始めたのは昭和40年頃からでしょうか。それまでは安かろう悪かろうで、現在の中国製品と同じでした。私が一年前に買った980円のトースターは焼き上ったパンが半年後に飛び出さなくなり、煙を噴き上げました。   

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考える間でもないのですが、製品の品質を保証することは大変なことです。航空産業でも同じことが言えます。   

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米国西海岸ワシントン州のシアトルにボーイングの主力工場がありますが、その片隅に、今もあると思いますが、B747型機の垂直尾翼だけが聳え立っています。これを巨大な油圧装置で、来る日も来る日も垂直尾翼を左右に曲げたり捻じったりしており、飛行時間に換算して、何時間ほど飛行すれば、尾翼のどの部分にどのような亀裂が入るかを、既に引き渡したどのB747の飛行時間よりも先行して疲労試験を続け、その結果が航空会社に向って、XXXX飛行時間ほどで亀裂や変形が生ずるから、その時間が近着いたら、前もって点検せよとの通告が発せられます。これはボーイングだけのことではなく、世界の主要航空産業各社に共通しております。 

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昭和50年代に入って早々の頃でしたが、イスラエル人の訪問を受けました。予告なしの訪問で、用件が判らぬままに私が会いました。イスラエルで戦闘機を開発製造する会社のアジア地区販売担当と名刺には書かれていましたが、用件を聞いて私は驚き、さすがはユダヤ商法だと感心しました。 

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御存知の通り、イスラエルはそれまでに周辺のアラブ諸国と四次に及んで大規模戦闘を繰り返しておりましたが、その間にエジプトやシリアから多数のソ連製武器を捕獲しておりました。一方で、アラブ諸国はソ連による部品補給が気紛れで途絶えがちになることに悩んでもいたそうです。そこで、イスラエルの某社は捕獲したソ連製戦車や戦闘機を徹底的に分解調査して、主要部品の模造品を作り、これを和平協定が結ばれた後のアラブ諸国へ売り始めたのです。謳い文句は、「イスラエル製の模造部品の方がソ連製純正部品よりもはるかに優れ、品質保証も付ける」でした。部品で困っていることがあったら、是非とも我が社に作らせてくれと云うのがかのユダヤ人セールスマンの用件でした。まことに見上げた根性です。

(7)に続く                                                  (200961日)


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