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航空工学基礎講座(5) [稲門機械屋倶楽部]

-社会学的観点に立つ入門編-  (2009MEW36 村尾鐵男記) 

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3. 信頼性管理と “On Condition Maintenance”、さらに”Monitoring

民間航空では、一機の飛行機が国際線では年間概ね3,300時間、国内線では2,700時間ほどを飛行します。この間、着陸後、離陸前、100時間、300時間、3,000飛行時間の間隔で機体やエンジンの点検を行いますが、この点検時間の間隔は航空会社毎に、叉、機種毎に異なります。昔はこの定時点検整備の後、10,000時間とか15,000時間の間隔でオーバーホールを行いました。オーバーホール(Overhaul)とは使用時間をゼロに戻すことで、分解して灯油で洗って再度組立てるのではなく、状態と機能を新品と同じに戻すことで、新品の組立よりも難しいと言われました。 

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ところが、奇妙なことが起こりました。オーバーホール直前まで、どこにも不具合も異常もなかった機体やエンジンが、オーバーホールを終えて新品に戻ったはずなのに、前よりも調子が悪くなり、故障が頻発してしまうことがありました。自動車を車検に出すと、かえって悪くなったとはよく聞かされた話で、私達も少なからず体験することですが、これと同じことです。 

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このような状況を避けるために考え出されたのが “On Condition Maintenance”です。「調子の良い内は触るな。故障してから修理すればよい」との考え方で、誤解を招き易い用語です。  

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先ほど記したDC-8JT3D-3B型エンジンで、12,000時間を故障なしで働き続けたエンジンがありましたが、これをオーバーホールした後、僅か15時間程で故障を起こしたことがありました。  

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故障しない限り働かせようとの考え方は、無駄な部品交換を避け、整備作業量を減らし、運航コストを下げるためにも有力な手段となるのですが、ただ、飛行機の場合は故障してから修理しようとの考え方では、致命的な結果を招く危険がありました。最も望ましいのは、故障や不具合が起きる暫く前にその兆候を発見し、故障が起きる前に正常な部品等と交換しておくことです。そのために導入されたのが”Monitoring, 即ち、日常の運航で機体主要部やエンジンの具合を監視し続けることでした。

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エンジンについての一例を挙げますと、毎日、最初の便で飛立った後、巡航状態になって15分後にエンジン排気の温度を機関士や副操縦士に測定させました。この温度記録を100日、200日と続けてグラフ化すると、排気温度が少しずつですが上がって行く傾向が掴め、その排気温度を示す連続した線の延長が、ある限界値を越える日を予測することが可能になりました。エンジンはその予測日の一週間とか数日前に交換すれば、飛行中に突如停止する事態を避けることができます。   

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かくして、杓子定規のような時間限界を設けてオーバーホールを行う方式は改められ、現在は”Monitoring”を常時続けながら、故障や不具合を事前に発見し、加えて、エンジン等は故障前に整備ができるので、品質も高く保つことが可能になっています。 

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MONITORING- JET ENGINE [軽井沢だより]

http://dorflueren.blog.so-net.ne.jp/2009-07-19-2 

(6)に続く                                            (200961日)


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