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航空工学基礎講座(1) [稲門機械屋倶楽部]

-社会学的観点に立つ入門編-  (2009MEW36 村尾鐵男記)

1 右廻りか左廻りか、前へ押すか後へ引くか 飛行機によく乗られる方でもあまり関心を持たれていないのがエンジンの回転方向です。エンジンが右へ廻ろうが、左へ廻ろうが、飛行中に停まらずに目的地へ無事に着陸できればよいのですから気にされる方もいないでしょう。飛行機のエンジンの回転方向は、機体の後方から前方を見たときのもので、ヘリコプターの回転翼(ローター)は下から見上げて、その回転方向が右だとか左だとか言います。このエンジンの回転方向は、実は英米で異なります。英国のエンジンは左廻りで、アメリカのエンジンは右廻りです。これはピストン・エンジンでもジェット・エンジンでも同じで、何故か英米の間で統一されておりません。 

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ジェット・エンジンの回転方向は慣れないと見分け難いのですが、プロペラ機はよく判ります。今は滅多に見られなくなりましたが、英国ロールスロイスのエンジンを搭載した国産YS-11機のプロペラは左に廻りますが、自衛隊が飛ばすアメリカ製のC-130輸送機のプロペラは右へ廻っています。このため、プロペラのブレード(プロペラの一枚毎の翼)はその捻じれ角度が右廻りのエンジンと左廻りのエンジンでは正反対になります。あまり知られていないので、飛行機を描いたイラスト図で、プロペラ翼の捻じり方向が正しくないものが時折り見受けられます。 .叉、右廻りのエンジンと左廻りのエンジンでは、エンジンの回転トルクの方向が反対になるので、エンジンを機体に装着する部分の形状が異なります。 

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 “To every action, there is an equal and opposite reaction.” 思い出されたでしょうか、ニュートンの力学第3法則です。アメリカ製の単発ピストン・エンジン機を想い描いてください。操縦席から見て、プロペラは右へ廻っています。エンジンそのものの回転トルクと大きなプロペラの回転トルクが発生しており、同時に機体を左へ傾ける反作用が生じています。この反作用に抗するべく、操縦士は機体の姿勢を保ちます。さらに、この反作用を打ち消すために、双発機では左右のエンジンの回転方向を反対にすることも誰もが思いつく対策の一つであります。ヘリコプターでは、大きな回転翼で生ずるトルクの反作用で機体が廻ってしまうので、これを防ぐために、尾部の小さな回転翼(テール・ローター)が垂直面で廻っています。 

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英語では右廻りとか左廻りを、右とか左の言葉を遣わず、Clockwise, Counter clockwise、即ち、時計方向とか反時計方向と表現します。エンジンの回転方向を何故か反対方向に決めた英国とアメリカが、何故、時計の回転方向は同じなのでしょうか。歴史的に見れば、英国の時計の方が先に存在したでしょうから、英国と独立のために戦ったアメリカの時計は左廻りでもよかったはずだと考えますが、まあ、時計くらいは万国共通の文字盤である方が便利です。 

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ついでに一言、エンジンのスロットル・レバーもアメリカ製飛行機では前へ押すと出力が増えますが、英国製飛行機では後へ引くと出力が増えます。

(2)に続く                                         (2009531日)


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