創作短編(53):女武者 巴御前 –1/8 [稲門機械屋倶楽部]
WME36 梅邑貫
時 :平安末期より鎌倉の初め、1180年頃
場所 :信濃と鎌倉
登場人物:巴御前と源義仲
巴御前(トモエゴゼン)については出生も没年も不詳ですが、源義仲の武将の一人として大活躍をしており、源義仲が、と呼ぶよりは木曽義仲の名の方がよく知られていますが、義仲が久寿(キュウジュ)元年(1154年)の生まれで、寿永三年(1184年)に没しているので、巴御前もこの時代の人物であろうと推測されます。
木曽義仲は三十歳で没しており、そのときの巴御前の年齢は、文献では一致しておりませんが、二十四、五歳であろうと推し計られます。
巴御前は、鞆(トモ)とも鞆絵(トモエ)とも呼ばれていたようですが、木曽義仲の便女でした。
便女は「ビンジョ」と読み、文字通りに便利な女性の意味で、身の周りの世話に始まり、煮炊き洗濯と何でも出来る女性を意味し、文献によっては美女と書かかれた言葉が訛って「ビンジョ」となり、やがて「便女」と書かれたと説明しています。
しかし、巴御前は、色白で美人であったようで、やがて長じてから木曽義仲の愛妾となります。木曽義仲と巴御前は夫婦であったと伝える文献もありますが、木曽義仲が源頼朝の軍勢に敗れて自害する前に、巴御前に「信濃に残した妻には最早会えない」と語っていますから、木曽義仲は巴御前とは別の女性を正妻としていました。
木曽義仲は一歳のときに父の義賢が頼朝の父である義朝に殺され、木曽へ逃れて育てられますが、兄弟同然に育った中原兄弟の妹が巴御前です。
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