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創作短編(49):番外編 江戸の珍商売 -6/8 [稲門機械屋倶楽部]

               2012-08 WEME36 梅邑貫



焼継屋(ヤキツギヤ)


 この名だけで何の商売かお判りでしょうか。割れた瀬戸物を元の状態へ修復する商売です。
 江戸の庶民は日常の生活で倹約に倹約を重ね、割れた茶碗や湯飲みも直ぐに捨てることはせず、治せるものは治して再使用しました。
白玉粉と称する接着剤を使いますが、餅米を砕いて粉末にした白玉粉のことではなく、鉛を含む粉末やガラス成分が多い「ふ海苔」を使いました。
 中国にも古くから割れた瀬戸物の接着方法がありますが、江戸時代の方法とはまったく異なり、私自身も実物を見ておりますが、歯の矯正金具のようなもので割れた場所を固定しています。
 それはともあれ、焼継屋の登場によって、瀬戸物屋の商売が影響を受け、売上がかなり減ってしまったようです。



鋳掛屋(イカケヤ)


 鋳掛屋は私の子供の頃はまだ存在しました。鋳掛屋とは、鍋や釜に開いた穴を塞ぐ行商の職人のことです。
 最近の鍋や釜は穴が開かなくなりましたが、昔はよく穴が開きました。でも、江戸の庶民は小さな穴が開いたくらいで鍋や釜を捨てて新しいものを買うことをせず、修理を重ねて使い続けました。
 穴の開いた鍋や釜と同じ金属を溶かして穴を塞ぐか、鑞(ロウ)付けで修理して穴を塞ぎました。
 
鑞とは蝋燭の蝋ではありません。今でも使われている手法ですが、錫と鉛の合金で、小さな穴を塞ぐには適した方法です。
 火事の多い江戸では、軒下から七尺五寸以内の場所で火を使うことが禁止されていました。
 
そこで、鋳掛屋は普通より長い七尺五寸の天秤棒(テンビンボウ)を肩に担ぎ、これに商売道具の鞴(フイゴ)、鑞を溶かすための火を燃す小型の炉、各種金属材料等を天秤棒の両端に吊り下げて街々を歩きましたが、仕事があると、七尺五寸の天秤棒で家からの距離を測り、それ以上離れた場所で鍋や釜の穴を塞ぐ作業に取り掛かりました。


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