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創作短編(44):直江兼續が詠む漢詩 -9/12 [稲門機械屋倶楽部]

                                  2012-02 MWE36 梅邑貫


山家
磐石垂蘰避世塵
山中旧宅独容身
白雲深處行人少
峭壁攢峯蓋四隣

山家(サンカ)
磐石、蘰(カズラ)を垂らして世塵を避く
山中の旧宅、独り身を容(イ)る
白雲深き處(トコロ)、行く人少なく
峭壁(ショウヘキ)攢峯(サンポウ)、四隣(シリン)を蓋う。 

「峭壁」とは切り立った断崖であり、「攢峯」とは峰々が重なり合った様子です。
世塵と世俗の雑事を避けて、山中で独り暮らすのが武将直江兼續の文人としての果たせぬ望みであったと推察されます。 

直江兼續は武将としては骨のある一面を強く持っており、特に上杉謙信の教えに従う「義」を大切にする心は最後まで捨てずに保ち続けました。
だからこそ、大身の大名や藩主と並ぶ高禄を得ながらも、上杉景勝を補佐する立場に留まり、決して景勝の前へ出ることもありませんでした。景勝も兼續の助言を、ただの一回だけを除いて、総べて受入れているのですが、例外の一回とは徳川家康が攻めて来たときのことです。

家康からの度重なる上洛要請を断り無視し続け、あの有名な「直江状」を発して徳川家康の非を責めました。関ヶ原の戦いの直前、遂に徳川家康は軍勢を率いて上杉討伐に北上しますが、西方で石田三成が挙兵したとの報せで反転します。その折、直江兼續は家康追撃を景勝に進言しますが、このときだけは景勝が兼續の作戦を受け入れず、家康が無傷で関ヶ原へ向かうのを許してしまいました。しかし、兼續は遺恨を抱くことはありませんでした。

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コメント 3

hanamura

山の中の風景を想像中(私の場合妄想中)
義務教育レベルの私は、杜甫しか名前が出てきませんが、直江兼続も杜甫が好きだったような気がします。(私の妄想)
by hanamura (2012-05-19 07:06) 

梅邑貫

hanamura さんへ
私も妄想します。
直江兼続が、もし秀吉の誘いを受けて、上杉景勝から離れて秀吉の直臣になっていたら、日本の歴史が大きく変わっていたであろうと妄想します。
いつも「創作短編」を御愛読いただき有難うございます。今後も妄想を逞しくして創作短編を書きます。

アルマ さん
早々のナイスを頂戴し、有難うございます。
by 梅邑貫 (2012-05-19 08:09) 

梅

数多く書き続けた創作短編の内で、「直江兼続」は地味で見せ場のない物語です。
それにもかかわらず、hakuさん、馬爺さん、tamanossirさん、rtfkさん の皆さんからもナイスを頂戴しました。有難うございます。
by (2012-05-19 20:38) 

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