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原発再稼働から逃げ回る政府の罪 -1/4 [明治維新胎動の地、萩]

                       by N.Hori

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(WEDGE・20124月号)の抄訳

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関西電力大飯原発、34号機の再稼働が取り沙汰されている。国の判断が先か、地元の受け入れ表明が先か。責任の押し付け合いのような事態は情けない。国家としての最重要政策の一つであるエネルギー政策が、なぜこれほど迷走するのか。結論から言えば、国が判断を逃げて、決断をしないからだ。東電国有化、発送電分離、 小売り自由化、さまざまなテーマがなぜ次々浮かぶのか。背景にはもっとも困難なテーマ「原発再稼働」を訴えることを避け、世論を推し量ってポピュリズムに陥る政治の堕落がある。

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/26には東電柏崎刈羽原発、5月には北海道原発泊原発が定期検査に入り、国内54基全てが停止する事態となる。「脱原発」は想定通りの結果を招いた。電力各社が2011年度に調達するLNGと石油は、それぞれ1700万トン、1200万キロリットル増える見込みだ。年間を通じて、原発を止めれば、燃料費は3~4兆円増加するとみられる。

11年の日本の貿易収支は31年ぶりに約2.5兆円の赤字に転落したが、その最大の要因は燃料輸入の増加である。原発停止は多くの国富の流出をもたらした。ほとんどの電力会社で、4~12月期の損益が赤字に陥った。各社とも、いずれ電気料金値上げに踏み込まざるをえない。

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イランがホルムズ海峡を封鎖すれば、原油価格が高騰する影響だけでなく、この地域に依存率の高い日本では燃料が途絶する事態もありえる。

国際競争力の低下した製造業には、海外移転圧力が働いている。そこにもともと高い電気代の上昇、燃料途絶リスクによる電力供給不安が加われば、当然、空洞化が進む。

空洞化、雇用減少、経常赤字、国債急落、、、。

原発停止は日本経済にさまざまな打撃を与えるだろう。経済の困窮は国民の生活と命を直撃する。

それでも原発を止めるのならば、電力料金の値上げを国民に受け入れてもらうしかないが、政府はその説得も避けて、出来もしない値上げをせずに済みそうな方策「電力改革構想」を掲げた。そうして、環境相は、「産業のため、と言う考え方をやめて、安全そのものを捉えて再稼働を判断する」と述べたが、「100%安全を」との世論に、「新安全基準なら大丈夫」と応えるのは、不断の改善を求めるIAEAの「安全文化」に反する。

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政治家が国民に訴えるべきは、他の技術と同じように、原子力もリスクを抱えていること。そして、リスクをマネジメントしながら便益との比較考量のなかで技術の活用の判断を行っていくことの大切さだ。最新の知見を反映したその時々の基準で、専門家が危険と判断するものは止める。原子力安全・保安院や原子力安全委員会が世界の最新情報を収集し、判断したことを尊重すべきだ。

ポピュリズムに寄り添う政治の意思決定が、国民生活の最も大切な基盤であるエネルギー政策を歪めている。


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村尾鐵男

1886年、日本では幕末の慶應二年ですが、英国で The Locomotive Act が制定されました。この法は別名、赤旗法と呼ばれる悪法中の悪法でした。
この Locomotive とは蒸気自動車のことで、蒸気自動車は運転員、機関員、それに赤旗を持って自動車の前方60ヤード(55m)を駆ける者の三名で走行させるべしと定められました。
現在の我が国の政権、原子力発電所を19世紀末の蒸気自動車と同じように危険視して、その周辺に赤旗を立て、政権自ら赤旗を振っています。
当時の英国は、この過てる政治主導の「赤旗法」によって、自動車の近代化と生産で、フランス、ドイツ、イタリアに大きく遅れてしまいました。
by 村尾鐵男 (2012-03-23 08:25) 

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