菜根譚 -8/10 [稲門機械屋倶楽部]
2011-09 WME36 村尾鐵男
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石火光中、爭長競短、幾何光陰。
蝸牛角上、較雌論雄、許大世界。
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石火(セッカ)の光中(コウチュウ)に、長(チョウ)を爭(アラソ)い短(タン)を競(キソ)う、幾何(イクバク)の光陰(コウイン)ぞ。
蝸牛(カギュウ)の角上(カクジョウ)に、雌(シ)を較(クラ)べ雄(ユウ)を論ず、許大(キョダイ)の世界ぞ。
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石火の如く短い人生で、人は長短を争って競い合い、何歳まで生きられるつもりなのか。さらに、カタツムリの角の上のような狭いところで優劣を較べて論じているが、人が住む世界がどれほど広いと思っているのか。
石火とは、火打石を叩いて生ずる火花のことで、一瞬の短い時間を意味します。
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さて、石火光中とか蝸牛角上の言葉に何かを思い出していただけるでしょうか。
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蝸牛角上爭何事、石火光中寄此身
蝸牛(カギュウ)角上(カクジョウ)何事を争そう、石火光中(セッカコウチュウ)に此の身を寄す。
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明朝の洪自誠を遡ること八百年、あの白居易、或いは白楽天が詠んだ「對酒」の一節です。
前にも書きましたが、漢詩の世界では他人の詩を引用したり、一部を借用することが許されております。
洪自誠の「石火光中、・・・」は後集の第十三項に現れるのですが、「菜根譚」をここまで読んで、酒を題材にする処世訓がないことに私は気が着きました。洪自誠が酒呑みであったかどうかが判りませんが、洪自誠から見れば、酒で身を潰すような者は「菜根譚」の埒外にあったと察せられます。
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