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やぶにらみF1(福島第1原子力発電所)論 -6/6 [稲門機械屋倶楽部]

                                      201105-18 WME36 村尾鐵男

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原子力村と機械工学の排除

 原子力平和利用の御旗を立てて「政産官学」複合体が公然と動き出したのは昭和30年代半ば、1960年代以降のことでした。この動きに巧みに乗って原子力工学なる専門学科を逸早く創ったのは東京大学ですが、「原子力工学」は最優秀の教授と学生を集めたとの自己撞着に陥って旧来の機械工学を排除してしまいました。

 そうではないと言う方も多くおられようと察しますが、F1事故発生以来の顛末を眺めると、機械工学の欠如が明らかになります。

 F1では、初期の地震発生と共に中央制御室が機能を失い、津波の襲来によって核燃料冷却用の非常電源も機能を失いました。細かいことは言いませんが、これこそが機械工学を排除した結果であり、原子力村が抱えていながら、村の住民だけが気着かずにいた脆弱性です。人は誰でもそうですが、一つのことだけを見ていると、知らぬ内に脆弱性を抱え込むものです。

現下の日本、原子力バカが多過ぎて、国民の財産である原子力発電所を消滅させないかと憂慮します。

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東京電力の非社会性

 F1現場で過酷な作業を強いられている者に東京電力が放射線被曝計を持たせていなかったことが暴露され、数が足りなかったからだと言い訳をし、原子力安全・保安院も注意をしたと言いました。

 私は東京電力とは何の利害もなく、今回のF1事故では必ずしも総ての責任が東京電力にあったとも思ってはいません。

 しかし、放射線漏洩の環境下で働く作業員に、それが直属の者ではなくて、協力会社の社員であったとしても、被曝線量計を持たせなかったことには弁解の余地が無く、思い上がった思考としか思えず、東京電力の非社会性を物語っており、この一件だけは東京電力が非難されても止むを得ないことです。

 これは労働基準監督局が担当する領域であって、経済産業省の原子力・安全保安院が口を挟むことでもありません。東京電力と原子力安全・保安院は同じ原子力村の中に在って、世間が見えなくなっている証左です。                   

(了)


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コメント 1

ぼくあずさ

村尾さん
福島第一原発事故発生前後のころ、早稲田大学は東京都市大学(旧武蔵工大)と原子力共同専攻を立ち上げた。詳細は知りませんが、最初の研究課題はF1の事故解析になるでしょう。我々の後輩たちが貴兄御指摘の原発を支える機械工学を早稲田の杜で学び、原発の安全性を高めることに貢献できることは喜ばしいことです。
http://www.nuclear.sci.waseda.ac.jp/

by ぼくあずさ (2011-05-28 08:40) 

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