創作短編(16):水戸黄門と生類憐れみの令 -2/8 [稲門機械屋倶楽部]
2011-03 WME36 梅邑貫
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「殿、大能(オオノウ)より牛乳が届きました故、牛乳酒を作らせました。新鮮なる内にお召し上がりいただきたくう思いまして」と言いながら、安積澹泊は片手で襖を開け、もう一方の手で小さな盆を奉げ持って書院へ入ったが、盆の上には二人分の飲み物が載っていた。.
「酒は独りで呑んではいかん。独りで酒を呑むと美味くないし、量を越してしもうて、意味不明のことをわめき、暴れる輩もおる」と、光圀は常日頃から身辺の者に言っていたから、澹泊が牛乳酒の二人分を持って来たのだと光圀は察した。でも、牛乳酒は酒を牛乳と水で割ったもので、さほど強くはない。
「澹泊、飲みたくば独りで好きなだけ飲んでもよいのだぞ。葡萄酒も呑んでよいのだぞ。酒を加えてはおるが、さほど強いものではないからな」
葡萄酒とは山葡萄を搾った汁に、竜眼肉と称する竜眼の木の実を搾った汁を混ぜ、これに泡盛を好みに応じて加えたものだ。
「大変美味きものにございます。これも朱舜水殿からの直伝でございまするか」
「いや、牛乳酒と葡萄酒はそもそもは朱舜水殿からお教え願ったが、わしが工夫したものよ。明国の濁酒(ニゴリサケ)より、はるかに口当たりがよいぞ」
「お女中衆も密かに舐めておるとか、小耳に挟んでおります」
「おお、そうか。美味きものは皆で分けおうて楽しむがよかろう。皆にも伝えてくれ」
「はっ、はい、しかと伝えまする。ところで、殿、先般御相伴致しましたるカケ蕎麦は美味うございました」
「ああ、あれか。拉麺(ラーメン)と申す明国の蕎麦であるが、確かに美味いのう。だがなあ、澹泊、拉麺は美味いだけでないのだ。長生きの素でもあるのだ」
「長生きの素でございますか。道理で殿は色艶よく、いつもお元気そのものでございまする」
黄門様はかなり珍しい物を食して健康管理をして居られたようですね、家康もかなり薬学に詳しく食べ物にも気付かっていたとか・・・
by 馬爺 (2011-04-21 10:17)
カルーアミルク…好きです!
by hanamura (2011-04-21 22:18)