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米国 Southwest航空の B737機、天井に穴 -2/3 [稲門機械屋倶楽部]

                                                2011-04-10 WME36 村尾鐵男

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客室の与圧

 今の時代、私達は大いに飛行機を利用し、特に意識することなく客室の与圧を体験しております。旅客機の客室は、高い高度を飛行するときには、概ね0.8気圧に保たれており、地上高度で言えば、2,400mの山上とほぼ同じ気圧です。

 長距離飛行の場合、飛行高度はほぼ1万メートルでありますが、外気圧は地上の4分の1程度で、与圧がないと、乗客はヒマラヤ山頂へ無酸素登頂するのと同じ環境に置かれることになります。

 しかし、飛行機は同じ高度だけを飛ぶのではなく、頻繁に飛行高度を変え、外気圧も一定ではありません。このため、与圧装置は客室内気圧がほぼ0.8気圧になるように作動し続け、その結果として飛行機の胴体は頻繁に膨らんだり縮んだりを繰り返します。

この荷重、或いは負荷の繰り返しが金属疲労となるのですが、最初は外板の小さな亀裂として生じ、この亀裂が縦に連なって大きな亀裂へと成長します。この亀裂(Crack)を点検で早期に発見して亀裂を取り除く整備作業を行えば、大きな事故を招くことを避けられるのですが、点検を怠ったり、点検の頻度が少なかったり、又、点検の深度が浅いと、長く成長した亀裂の部分で外板が破断してしまいます。

余談ですが、飛行機内部の総てを与圧したのは、戦時中のB29爆撃機が最初です。日本の軍用飛行機も与圧することに成功しておりますが、それは狭い操縦室だけでした。

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今、福島第一原子力発電所の現場で働く人達が放射線防護服を着用して、身体の動きに大きな制約を受けていると報道されていますが、爆撃機の機内で、与圧がないと、乗務員は気密服を着用しなくてはならず、爆撃機の機内後方で投弾作業を行う兵員は気密服を着用したのでは作業に大きな制約を受けます。

私達の年代は、戦争末期に上空から思いのままに多量の爆弾を投下して飛び去るB29爆撃機を見上げて逃げ回りましたが、あれだけの爆弾を精度の高い照準で投下できたのは与圧装置の効果でもあります。


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