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唐詩選、別離と望郷の詩 -4 [稲門機械屋倶楽部]

                                       2010-10-05 WME36 村尾鐵男

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高適「別薫大」

千里黄雲白日曛 北風吹雁雪紛紛 莫愁前路無知己    亜天下誰人不職君

〔千里の黄雲(コウウン)白日(ハクジツ)曛(アワ)し。北風(ホクフウ)雁(カリ)を吹いて雪紛紛(フンプン)たり。愁(ウレ)うる莫(ナカ)れ前路に知己(チキ)無きを。天下誰人(タレビト)か君を識(シラ)ざらん〕

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高適(コウ・セキ)は唐の玄宗に仕え、次の粛宗の時代には諫議太夫に就いています。50歳で初めて詩を詠んだと伝えられ、唐詩選の中にこの詩を発見したとき、私は軽い驚きを覚えました。詩の出来栄えが優れているのは勿論ですが、私が驚いたのは「千里黄雲白日曛」です。春先になると、日本の空は中国大陸から吹き付ける黄砂で悩まされますが、唐の時代に既に黄塵、即ち黄砂が吹いていたと知って私は驚きました。

〈千里の彼方まで黄塵の雲で天は暗く、北風が雁に吹きつけ雪が紛々と舞う日に君は旅立つ。行く先で知り合いがいないと心配することはない。この天の下、君を知らぬ者がいないことはない〉との詩です。 

                                                                            高適「送柴司戸充劉卿判官之嶺外」

有才無才不適 行矣徒勞

〔才あらば適せざるはなし。行けや徒(イタズラ)に労すること莫(ナカ)れ〕

〈才能があれば何処ででも務まるから、徒に心配せず出掛けるがよい〉と転勤する友人を励ます詩です。

題名は〈柴司戸(サイシコ)、劉卿(リュウケイ)の判官に充(ア)てられて嶺外(レイガイ)へ之(ユ)くを送る〉と読みます。嶺外とは今の広東の辺りですが、通常の転勤先としては最も南の地となります。これより南の海南島とか雲南地方になると、疫病の巣窟であり、死刑を免れた罪人が海南島や雲南へ流されても、ほぼ一年で病気に罹って死亡しました。

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現在の中国でも、雲南山岳部の奥地は正体不明の細菌やウィルスの発生源となっていることはよく知られています。

柴司戸とは、柴と言う名の司戸で、戸部に属する官僚です。戸部は土地の管理、戸籍の管理、官僚への俸給の管理、さらに財政一般の管理を行う部署です。

尚、唐王朝の官制を簡単に記すと、三省六部から成り、中書省が皇帝の命令書を起草し、それを門下省が審議し、尚書省が配下六部、即ち礼部、吏部、戸部、兵部、刑部、工部を通じて皇帝詔勅の実行と行政を行いました。

(5)に続く


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