詩経、最古の規範集 -6 [稲門機械屋倶楽部]
2010-07-11 WME36 村尾鐵男
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【謀夫孔多 是用不集】
〔謀夫(ボウフ)孔(ハナハ)だ多く、是(コレ)を用(モッ)て集(ナ)らず〕〈議論ばかりが多くて、仕事がまったく進まない〉ことを言っております。「船頭多くして船山に登る」と同じ意味です。.
【戦戦兢兢 如臨深淵 如履薄冰】
〔戦戦兢兢として、深淵に臨むが如く、薄冰を履むが如し〕.
特に注釈を必要としませんが、「戦戦兢兢」が最近では「戦々恐々」と書かれことが多いので気になります。.
【君子屡盟 亂是用長 盗言孔甘 亂是用餤 巧言如簧 顔之厚矣】
〔君子屡(シバシバ)盟(チカ)う。亂、是(ココ)を用(モッ)て長ず。
盗言(トウゲン)は孔(ハナハ)だ甘く、亂、是(ココ)を用(モッ)て餤(スス)む。巧言(コウゲン)、簧(フエ)の如きは、顔(カンバセ)の厚きなり〕.
〈一国の君子がしばしば誓いを変えれば、乱が生ずる。一度約束したことは変えてはならない〉
〈悪者の言葉は甘く心地良く聞こえるが、それに乗ると世の中が乱れる〉
〈笛のように切れ目なく喋るのは厚顔の証である〉.
【戒狄是膺 荊舒是懲】
〔戎狄(ジュウテキ)は是(コレ)を膺(ウ)ち、 荊舒(ケイジョ)は是を懲(コラシ)む〕.
戎狄荊舒は当時の漢民族を取り巻いていた異民族で、これを漢民族は文明から取り残された未開の蛮族として獣の名を付けて呼びました。日本を「倭」と呼んだのは、獣扱いはしないものの、文明に遅れた矮小な民族と見做しました。
最近は遣わない言葉ですが、「膺懲」(ヨウチョウ)・・・撃って懲らしめる・・・の語源です。私達の年代が子供の頃、「蒋介石を膺懲せよ」と新聞が大きく書き立てていたのを思い出します。
(7)に続く
「如履薄冰」を読み、思わず終戦の年の元旦、薄氷のはった秋川の渕。着物を着て、下駄を履いた私が湧水が氷り、盛り上がった氷塊を越え損なって入水した事件が脳裏に浮かびました。後日、その顛末を報告します。
by ぼくあずさ (2010-07-15 09:57)