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旧ソ連製航空機の安全性 -8 [稲門機械屋倶楽部]

                                       2010-07-01 WME36 村尾鐵男

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8.Cannibalization

奇妙な副題となりましたが、元々は人が人を食べると言う意味ですが、そこから発して「共食い」とか、さらに穏健な意味として「部品取り」の意味で遣われます。

                                                                                         私が初めてインドネシアを訪れたとき、当時のジャカルタ・ハリム空港の片隅に飛ばしているとは到底思えない飛行機が並べてあり、これがCannibalization用、即ち部品取り用の機体でした。部品管理の能力に難があったインドネシアの航空会社では、交換用部品が不足したときは、無償でも引き取り手のいない古い機体を地上に置き、この機体から部品を取っていたのです。高価な新品部品を買わずに済むこともあって一石二鳥の効果があると言っておりましたが、緊急の一時的措置でもない限り、厳密には航空法に反する行為です。既に運航を止め、中古機として売りに出した機体は、買手が見付かるまでは整備をしないので、原則として耐空性(Airworthiness)を失っております。これはその機体の部品も同じことで、部品としての価値を失っております。その部品を運航中の機体に移し替えることは、部品としての検査と修理や整備が行われて、正規の予備部品として認定されぬ限り認めらない行為です。

エジプトのカイロ空港でも同じ光景を見ておりますが、モスクワのシェレメーチェボ空港の奥の方には膨大な数の飛行機が駐機されており、しかも飛んでいるらしき様子が見受けられないので、Cannibalization用の機体であったと考えられます。

部品の互換性に乏しい旧ソ連製の航空機では、Cannibalization用にも膨大な数の「予備機」が必要であったろうと察せられました。

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話は逸れますが、中古機を売るのも難しい仕事で、中古機は整備状況が確実に優れていないと容易には売れません。

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2002525日、台湾の中華航空が運航するB747-200型機(国籍登録番号B18255)が台北から香港へ向う飛行中に台湾海峡へ墜落しました。この機体は、この飛行を最後に50万ドルで売却されることになっていたのですが、その寸前に大きな事故を起してしまいました。機体が台湾海峡へ没しているために、浮き上がった部品や機体の破片からの調査結果ですが、長年の使用で生じた金属疲労により、飛行中に外板が剥がれて空中分解に等しい状況になったと報告されております

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私が知る限りでは、中華航空は売ることもできない古い機体からCannibalizationを行う航空会社ではなく、それに既に“Hull Loss”なる言葉を紹介しておりますが、機体構造の基本部分をCannibalizationの対象とすることはできません。飛行機の大敵は金属疲労と腐蝕でありますが、入念な点検と整備で発見し、疲労と腐蝕がさらに進行することを防いでおります。

(9)に続く


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ぼくあずさ

村尾鐡男さん 別のプラントの部品を取り外して使うとの情報は、帰国した据え付け指導員から聴いていました。戦時中ならいざ知らずと思いました。

by ぼくあずさ (2010-07-05 07:51) 

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