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旧ソ連製航空機の安全性 -7 [稲門機械屋倶楽部]

                                2010-07-01 WME36 村尾鐵男

7.再び余談

旧ソ連時代にロシアに住んだ方から幾度も聞かされた話です。専制強権の国でありながらも治安の悪いロシアで、人々は南京錠を買って要所に吊り下げるのですが、錠前と鍵は店先に山積みなっており、先ず錠前を手に取り、次に鍵の山から無作為に鍵を選び出して、錠前に差し込んで開閉が出来ることを確認できるまで鍵を選び続けます。ロシア人が日本へ来て錠前と鍵を買う際に例外なく驚くのが、日本では錠前に合う鍵を選ぶ必要がないことです。旧ソ連では錠前と鍵の製造職人が異なる労働組合に属していたのであろうと私は善意に想像しております。

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旧ソ連では大切な自家用車を駐車させて去る際に、ワイパーブレードを外して車内に保管し、当然、ドアーは開けられないように確実にロックします。当時のソ連では如何なる車種のワイパーブレードも同じ型の同じ大きさで、これは画一主義の美点の発露でもありました。しかし、品質には美点がなく、しかも重い雪を掻くことの多いワイパーブレードはゴムの刃が直ぐに磨耗して用を為さなくなりました。そのときは近くに駐車する自動車から車種を問わずにワイパーブレードを無断永久借用すれば済むことでした。

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モスクワ滞在中のある夜、強烈なウオッカとロシア・ワインに飽きてしまい、永年馴染んだ美味い酒が飲みたくなりました。東京から同行してくれた方がモスクワに詳しく、別のホテルの「$バー」へ連れて行ってくれたのですが、驚きました。外国産の酒が銘柄を問わず、グラス一杯が米ドルで1ドルです。外貨獲得のためのバーで、外貨以外の通貨では飲めないのですが、そのグラスが大きく、$1は格安です。私は画一経済の恩恵を足元が覚束なくなるまで遠慮なく頂戴しました。カリフォルニア産のオレンジジュースも一杯が$1ですが、わざわざジュースを選ぶ人は見当たりませんでした。

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ロシアの女性は働き者です。モスクワの街を疾駆する重たいダンプ・トラックを運転しているのも、バスの運転手も、ちらつく雪の下でアスファルト舗装をしているのも中年の逞しい女性達でした。

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南部ロストフの郊外でヘリコプター生産工場を隈なく見せてもらいましたが、製造の現場では半数ほどの作業員が女性でした。私の太腿より太い腕に重たいレンチを軽々と持上げ、エンジンを装着するマウント・ボルトを締めていたのも逞しい中年女性でした。当時のソ連重工業は女性達の力なくては成り立たなかったのだろうと想像しますが、一方で、あの贅肉皆無のバレリーナ達は普段何を食べているのかと不思議に思いました。

(8)に続く


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