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樋口一葉、3月25日誕生 [稲門機械屋倶楽部]

              ・・・20120-03-25 MEW36 村尾鐵男  明治5年(1872年)325日、日本の国文学に不朽の名作として残る「大つごもり」、「たけくらべ」、「ゆく雲」、「にごりえ」等々を著した樋口一葉が東京で誕生しております。この年、明治5123日を明治6年(1873年)11日とする太陽暦への移行があり、樋口一葉誕生の日は太陽暦では明治552日となりますから、この辺りについては大目に見て下さい。  東京都台東区竜泉三丁目、地下鉄日比谷線の三ノ輪駅から徒歩10分ほど、国際通りと土手通りの間に挟まれた場所に堂々たる「一葉記念館」があります。

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私事で恐縮ですが、私の娘が毎年6月、父の日に「ぐるっとパス」を贈ってくれます。「ぐるっとパス」とは東京都内の美術館や博物館を概ね無料で観覧できる多数の入場券を綴じ込んで2,000円で販売されているものです。

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昨年、この「ぐるっとパス」で一葉記念館を初めて訪ねました。三ノ輪の近辺には他に博物館や美術館がなく、今まで立ち寄る機会がなかったのですが、初めて訪れたこの「一葉記念館」で初めて知ったことが三つありました。

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先ず一つは樋口一葉の父親樋口則義のことです。甲斐国に住む農民でしたが、多喜との結婚が認められず、慶応3(1867)に江戸へ駆け落ちするのですが、下級武士である同心の株を買って武士となり、明治維新後は下級の役人となっております。幕末には農民でも武士の身分が買えたと聞いておりましたが、その実例を「一葉記念館」で発見しました。

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二つ目は、樋口家の次女として生まれた奈津、即ち一葉は竜泉町で駄菓子屋を営んで生計を立てていたのですが、その駄菓子の仕入先が今の御徒町辺りにあったようで、片道約3キロの道程を毎朝往復していたことです。昔の人は足腰が丈夫であったとは言え、結核を患っていた一葉には酷な生活であったろうと想像されます。

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三つ目は、樋口一葉は結核のために24才で亡くなっておりますが、この若き才媛が下級武士の娘なるが故に、当時の文壇から十分な援けが得られなかったと推測されることです。さらに生活には大変苦労していたことが物語られておりますが、加えての結核も重なり、多数の展示物を見ている内に思わず目が曇ります。

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誤解を受けそうな言い方になりますが、樋口一葉を金銭面で援けてやれる男が明治初期の日本に何故現われなかったのか、私には最後まで謎として残りました。

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樋口一葉は20篇ほどの小説と多数の随筆を残し、結婚運にも恵まれず、若くして薄幸のまま世を去っております。一葉記念館の直ぐ近くに住いの跡が残っておりますが、有志によって建てられて運営される立派な一葉記念館が一葉の総てを遺し語っており、以て瞑いすべしでしょうか。「一葉記念館」を一度は訪ねられることをお薦めします。


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ぼくあずさ

村尾鐡男さん
情報、ありがとうございました。 毎年の墨田堤でのお花見、向島百花園まで足を延ばす度に、一葉所縁の地との思い込み?!で探していました。英語の漫画を読んで外大に合格した中学の学友盛林君が向島に住んでいたのを想い出し、聴こうと考えていた処です。幕末には武士の位が購入できたとは、初耳です。

by ぼくあずさ (2010-03-25 14:32) 

たぐちまさお

こんにちは。
以前樋口一葉の墓をみたことがあったと記憶していたので,Wikipediaで確認しました。やはり,築地本願寺和田堀廟所(永福町駅より下高井戸駅の方が近い)でした。杉並区の永福町に住んでいたころ,散歩でこの墓地を歩いたことがありました。ここには他にも有名人の墓がたくさんあります。
 
甲州は,山梨県塩山駅前に甘草屋敷(かんぞうやしき)と呼ばれている旧高野家住宅があります。2度訪れたことがあります。ここをたずねると樋口一葉ゆかりの場所だとのことで一葉の関連品が展示されています。父親の出身地なのでしょうか。

by たぐちまさお (2010-03-26 18:37) 

村尾鐵男

たぐちまさお様
実は私の母方の祖母は甲州塩山の出身で、私自身は祖母が若くして逝っているので直接聞く機会はなかったのですが、母はその母から塩山は樋口一葉の父母の出身地であると聞いておりました。
さらに余計なことですが、塩山には元々甲州生まれの人と、阿波(徳島)から移り住んだ者とが混在しているようで、私の祖母も阿波から移って来た家系でした。塩山の阿波出身者には住み難かったようで、機会を捉えて江戸へ出たそうです。あくまでも憶測ですが、樋口一葉の両親も江戸へ出ましたから、もしかしたら、その昔に阿波から来たのかもしれません。
拙文へのコメントを有難うございます。
by 村尾鐵男 (2010-03-26 21:14) 

ぼくあずさ

たぐちまさおさん お久ぶりです。1年前に貴兄が投稿された記事があります。今年も花の便りを楽しみにしております。昨年秋に夜行バスで上高地に行きましたが夜陰に諏訪湖を眺めました。今年は御柱祭で町が盛り上がるることでしょう。
2009花だより:信州諏訪の遅い春と井の頭公園のさくら [稲門機械屋倶楽部]
http://dorflueren.blog.so-net.ne.jp/2009-04-20

by ぼくあずさ (2010-03-26 23:14) 

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