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民主党の環境・エネルギー政策(6):日本はどうすれば良いか [稲門機械屋倶楽部]

                                       ・・・ 2010-01 MEW36 村尾鐵男

結論を先に言えば、日本は原子力発電の増強以外に方法はありません。日本の発電は、2006年の資料ですが、原子力27.6%、石炭27.2%、液化天然ガス23.1%、石油11%、水力8.7%、その他2.4%の構成です。

この発電用エネルギー構成を見れば、容易に考えられるのですが、原子力の占める割合が意外に少なく、減らすことに努力が続けられている石炭と石油が依然として大きな部分を占めていることです。

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原子力発電と言えば、根強い拒否反応が出て来ることもあり、詰まらぬ事故が頻発していることも事実であります。しかし、その原因を聞くと、技術者としては唖然とせざるを得ない〈人災〉に起因するものが大半であります。高圧蒸気パイプから蒸気が漏ったとか、原子炉の制御棒が降りなくなったとか、原子力発電理論が疑われるようなものではなく、点検不足とか熔接の不完全とか、人災に属することが起因となっています。発電会社の技術管理を一層高める必要はありますが、原子力発電そのものは技術理論としては安全なものであります。

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安定、且つ大量の電力を安価に得るほう方法として原子力発電が最も適しており、太陽光や風力に頼るのはそれこそ日照り任せ、風任せのエネルギー行政です。

原子力発電について、必ず出る話があります。それは地震発生時の危険性と米国スリーマイル島の原子力発電所事故(1979年)とウクライナのチェルノブイリ原子力発電所事故(ソ連時代1986年)であります。

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日本は世界有数の地震国でありますが、地震予知の研究もかなり進み、その予測精度も上がっています。でも、日本にも地震の発生が少ない地域もあるのですから、立地条件を満たす場所が探せないことはなく、加えて耐震設計には十分な経験と実績があります。

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スリーマイル島の原子力発電所事故は冷却水ポンプの故障が原因であり、チェルノブイリ原子力発電所の事故は、通常の運転中に無謀とも言える実験を試み、しかも設計仕様書で指定された耐火材料が入手できずに、代わって可燃性の材料を使って建設したことが原因でありあました。いずれも人災であり、原子力発電理論に起因するものではありません。

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今、日本では少子化が心配されていますが、自然エネルギーをあり余るほどに享受するには人口が少ないに越したことはありません。人口が増えて、生産量を上げようと努力すればエントロピーの増加は避けられず、自然環境は必然的に破壊されます。

民主党政権の少子化対策相は、所管外のことに好んで口を出していますが、本来の所管事項についての発言がなく、エントロピーを減らしたいのか増やしたいのか、何をしようとしているのか。叉、関係する閣僚からもエネルギーに関わる長期展望と政策が語られておりません。バラマキ政策の下、ソーラーパネルに補助金を付けるだけでは日本のエネルギーは確保できません。

(完)


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コメント 5

ぼくあずさ

私はオバマのエネルギー政策を「風まかせ」と揶揄していましたが、一般教書には原子力と高速鉄道が重点施策になりました。
小鳩内閣はドイツではとっくに止めた自動車購入補助金を延長し、オバマさえもとり上げない燃料電池普及に購入補助金を付けています。曰く不可解!!

by ぼくあずさ (2010-01-31 10:09) 

今井 鉄

村尾様、諸兄
世に防衛、エネルギー、食料の三点については特に、国民投票や賛成多数ではなく政治の主導ではないかと思ってます。
外国から攻撃されているさなか国民投票でもないでしょう。民主主義を誤解している政治家が多いように思えてなりません。
オイルシヨックの頃、油が極端に不足するなかでも、電力危機に陥ることもなく日本の産業が栄え続けました。しかし当時の原子力行政や電力会社に賞賛の声は一度も聞いたことがありませんでした。日本人は平和ボケしているようです。
防衛に人(確か1パーセントもない)も金もかける必要がない。他国から攻撃されることなどありえない。桃源郷と思っている人が多すぎる。と皆さん思いませんか。   今井 鉄
by 今井 鉄 (2010-02-01 09:39) 

村尾鐵男

今井鉄様
先に御指摘になっておられた早稲田大学が設計した風力発電機が所定の性能が得られずに訴訟沙汰になった件ですが、私もニュースで聞いており、定格性能に関する契約条文が不十分であったか、設置した筑波の学校に〈定格〉に関する理解が不十分であったためだろうと想像しました。叉、早稲田のどこの専攻科か知りませんが、契約テクニックに疎かったためでもあろうと推察しました。私が試作機だけで断念したのは、風力発電機はモニュメントのような飾りとして設置するならともかく、実用になる電力を安定的に得たり、さらには電力を売ることを目的とする場合、発電機の売買契約は極めて難しく、家庭に設置される場合には、〈定格〉なる用語を理解してもらうことは殆ど不可能で、そのような状況で販売すれば、必ず訴訟沙汰が頻発すると危惧したからです。
自転車を買うときに、下り坂で時速20kmで走らすことが出来ると聞いても、それを契約で保証させて買う人はいません。しかし、風力発電機は自転車ほどに身近な製品ではなく、しかも発電した電力が売れるとなれば、私の事務所へ現われた世の奥さん方は月に幾らの売上になるかが関心の的で、発電しない日が幾日も続くことがあると言う私の説明には耳を貸しませんでした。
情けないことですが、儲けとか欲が先走ると、苦労して開発した工業製品もまったく想像もしない方向から評価を受けることを余儀なくされますが、これも私自身の辛い実体験の一つでした。
今だから言えますが、早稲田の理工学部にも製品の保証と契約のテクニックを教える講座があっても良かろうと考えております。筑波の学校用に風力発電機を設計した教授(?)は痛感していると想像します。話を逸らしてしまって恐縮ですが、物作りは難しいものです。
by 村尾鐵男 (2010-02-01 21:08) 

今井 鉄

まったく同感です。技術ばか(失礼)の契約知らず、だと思います。
とくに自然を相手にする商売、外国との商売、初めて新製品を世に出すときの契約というのは特に難しいものです。日本人はえてして契約に対して関心をもたないというか、重視しないという特徴があると思ってます。同じ民族の間で契約がなくても誠意をもってつくす。しかし外国との商売はそうはいかない。特にパキスタン人は契約書や議事録をつくるのが上手だと思いました。他民族相手に失敗を繰り返してきたのでしょう。  今井 鉄
by 今井 鉄 (2010-02-02 09:44) 

ぼくあずさ

村尾さんのCommentされている通りだと思います。我々の経験を伝授する機会があれば協力できると思います。
今井さんの云われるパキスタン人は欧米系ゼネコン勤務のキャリアがあるのではないか!? タイその他では雇われ欧米、豪人の技術者が会議に出て来ました。米国系との商談では分厚い購入仕様書に対するDeviation list 作りに神経を使いました。国内は東西で少し事情が異なりました。ユーザは大抵の場合、契約書や議事録が無くとも昔からのお取引先ですからトラブルが生じることはありません。

by ぼくあずさ (2010-02-02 11:11) 

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