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航空工学基礎講座(7) [稲門機械屋倶楽部]

-社会学的観点に立つ入門編-  (2009MEW36 村尾鐵男記) 

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4.総ての基本は適切な工具による正しい作業

飛行機、即ち、機体、エンジン、主要部品、その総てが持てる機能を正しく発揮させ、品質を維持し続けるためには頻繁な点検と整備を欠かすことができません。この点検と整備の作業で欠かせないのが、適切な工具を使って正しく作業することです。 

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万能スパナとかモンキーレンチと呼ばれる工具があります。スパナの顎の開きを自在に調節できる便利な工具で、どこの工場にも家庭にも備えられているものですが、航空機の整備作業では使いません。何故なら、ボルトやナットの頭に正しく合わないからで、この万能スパナを使って飛行機の整備をしたら、その整備士は叱責を受けます。しかし、それ以前に、あの万能レンチは極めて壊れ易いもので、力を入れてトルクを掛けているときに、レンチの顎が外れて飛んで来たら大怪我をして危険です。 

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飛行機に使われるおよそ総てのボルトやナットには、それを締める際のトルクが指定されていて、必ずこのトルクを掛けなくてはなりません。そのためには、ボルトやナットの六角の頭に正しく合うレンチで締めなくてはなりません。 

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私の不勉強で正確ではありませんが、飛行機の重要な部分に使われるボルトとナットは塑性域まで固く締めることを前提としているはずです。弾性域では振動で緩む危険があるからで、塑性域まで締めるには、それなりのトルクが必要であり、そのためにはボルトやナットの形状とか寸法に正しく合った工具が欠かせません。   

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叉、電動工具は火花が飛ぶので、絶対に使いません。動力工具は100PSI(約7kg/㎠)の圧縮空気で駆動されるPneumatic Toolを使います。それもボルトやナットを外すときにはよく使いますが、締めるときは、よほどの大トルクを必要としない限り、人力で作業を行い、腕にそのトルクの感覚を覚えさせます。   

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飛行機はほぼ総てのボルトとナットに”Safety Wire”が掛けられています。セイフティー・ワイヤーは日本語では「安全線」と呼ばれますが、日本語の「線」にはLineの意味もあるのに対して、Wireにはその意味がなく、この場合は単なるステンレス製の直径0.5mmほどの針金です。   

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機体もエンジンも部品も、そこに使われるボルトやナットの六角の頭にこのステンレス製の針金を通す穴が開けられており、これにセイフティー・ワイヤーを通して捻じり、さらに隣のボルトやナットの頭にも通して、二つのボルトやナットを襷を掛けるように結びます。このようにして、一方のボルトやナットが緩もうとすれば、セイフティー・ワイヤーで対になった一方のボルトやナットが締まる方向へ力が働きます。 

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ボルトやナットが並んでいない場合には、近くの構造部材等に小さな穴が開けてあり、ここへセイフティー・ワイヤーを通して固定し、ボルトやナットが緩まないようにします。   

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飛行機では、点検や修理で緩めたり外したボルトやナットは再度使うことはせずに捨てます。叉、世間でよく見る廻り止めのワッシャーは使いません。 

(8)に続く                                                                                                                  (200963日)


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