創作短編(52): 子供手当の元祖秋月種茂 –9/10 [稲門機械屋倶楽部]
WME36 梅邑貫
「殿、産後に命を落す母親が多く困りおりまする」
「産婆に払う代金が不如意なる故か」
「いや。産婆がおらぬ村が多々あり、それ故にござりまする」
種茂の行動は早く、急使を大坂へ派遣して産婆を連れて来させ、さらに新たな指示を与えます。「以後、貧しき故の間引きは固く禁ずる。双子を生んだ折は、その産婆代は藩費と致し、双子の親に扶助料を与えよ」
明倫堂を開いたとき、秋月種茂はその建学の精神を文書で明らかにしております。曰く、「各人、自らの行動規範を確立せよ」。 あるとき、明倫堂での成績表が種茂に届けられましたが、それに目を通した後、明倫堂の教官達に申し渡した種茂の言葉が遺されています。
「人を育てるとは、五経を覚えさせることにあらず。人を吟味するとは、覚えたる詩経の数を確めるにあらず。世のため人のため、如何に働けるかを教え、それを見るのじゃ」
三人目以降の子供への一日米二合か麦三合の無償供与、双子の家庭への産婆料の免除と支援、明倫堂に於ける成績優秀者への奨学金付与、このような施策は藩庫が潤っていればこそ実現できたのですが、事実、日向高鍋藩は藩主秋月種茂の藩政改革の効果が出て、表高は二万七千石に過ぎないのですが、実高は六万石ほどにも達していました。
上杉鷹山に較べて、その兄の秋月種茂は話題になることが少ないのですが、秋月種茂の採った方策は現代にも通じます。
チャーチルの「民主主義は最悪だが、過去のどの体制より最善」(翻訳不肖)という言葉は、本邦には当て嵌まらないようですね。
by hanamura (2012-09-22 18:58)
rtfk、アルマ、haku、hanamura、tamanossimo の皆さんから nice を頂戴し有難うございます。
hanamura さんがコメントされたチャーチルが言ったと伝えられるは言葉は私も覚えております。
その民主主義ですが、やはり国家を牽引するリーダーが必要で、そのリーダーが市民運動のような狭い世界しか知らないと国の行き先を失います。さらに、最近のリーダーは勉強不足で、結局は権威に相応しい教養を欠いて政権の座から降りるか追われる無様な醜態を曝して終わっています。
情けないことです。
by 梅邑貫 (2012-09-23 08:41)