SSブログ

創作短編(44):直江兼續が詠む漢詩 -6/12 [稲門機械屋倶楽部]

                                  2012-02 MWE36 梅邑貫


松雪
孤松吹雪倚岩檐
一夜枝頭白髪添
睡起朝來開箔見
灞橋詩思在蒼髯

松雪(ショウセツ)
孤松(コショウ)吹雪して岩檐(ガンエン)に倚(ヨ)り
一夜 枝頭(シトウ)は白髪添う
睡起朝來(スイキ・チョウライ)箔を開いて見れば
灞橋(ハキョウ)の詩思(シシ)は蒼髯(ソウゼン)に在り。
「檐(エン)」とは庇(ヒサシ)のことで、吹雪の中で一本の松の木が高
岩の陰に立っているとの始まりです。一夜経ったら、その松が白髪のようになった。
「箔」とは簾(スダレ)のことで、朝、睡(ネムリ)から覚めて簾を開けたら、外には真っ白な雪が積もって白髪のようだ。

灞橋は長安郊外の水橋と呼ばれる橋が在った場所の名で、この橋の上に立つと詩が思い浮かぶとの言い伝えがあります。蒼髯(ソウゼン)とは濃い髭を剃った跡の青い皮膚で、松を意味します。


 吹雪の中の一本の松の木。幽玄の世界を偲ばせる漢詩で、直江兼續の尋常ならざる漢詩の腕前を示します。

 しかし、この孤高の松は直江兼續が自身の境遇を詠んだとの説が定着しています。會津百二十万石から米沢三十万石に減封されて、しかも三万人の家臣が共に米沢へ移り、行く末の厳しさを漢詩に託したとの解釈です。

 米沢三十万石の内から、上杉景勝は筆頭家老の直江兼續に六万石を与えましたが、兼續は固辞して一万石だけを取り、五万石は窮状に落ち込みそうな家臣へ分け与え、自分が取った一万石も、その半分の五千石を家臣に渡して、直江兼續は自身に僅か五千石を残しました。


nice!(8)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:blog

nice! 8

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。