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磨耗と腐蝕と疲労との闘い -11/11 [稲門機械屋倶楽部]

                                 2012-03 WME36 村尾鐵男

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炭素繊維の実用化

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 今年の3月13日から四回に分けて、「ぼくあずさは地球人」にB787型旅客機のことを書かせていただき、この新鋭機が炭素繊維と炭素系複合材を多用して機体重量を大幅に軽くしていることを強調しました。

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 炭素系材料の最大の特徴は軽くて強いことですが、さらに加えて、金属疲労と腐蝕が起きないことにも注目しなくてはなりません。

 私は鋼鉄とアルミ合金の世代に属しており、現実に炭素系材料を扱った体験を持っておりませんが、金属疲労や腐蝕と無縁の材料は航空機の点検と整備にどれほどの恩恵を与えるか、想像を越えるものがあります。

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 しかし、新しい材料には、その材料に習熟する時間が短いだけに不安も残ります。

 炭素系複合材は炭素繊維にプラステイックを含浸させて固めたものですが、このプラステイックが紫外線で劣化します。どれほどの飛行時間、即ち機体が太陽光に曝されている時間がどれほどになると明らかな劣化が始まるのか。おそらく凡その技術的予測はできていると考えられますが、実用上の体験が未だありません。

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 民間の旅客機は一年に3,000時間ほどの運航をします。ボーイングやエアバス等の民間旅客機製造会社は、実際に運航されている自社製造機より先に、10,000時間ほどを先行させて、自社の工場内で飛行中に遭遇するあらゆる負荷を与えて試験や実験を続けています。

B787型旅客機についても同じ負荷試験が行われているはずで、その結果、もしも機体のどこかに亀裂が入るようであれば、総べての運航会社に対して、機体のどの部分を飛行時間が何時間に達したら点検せよとか、部品を交換せよとの警告が発せられます。

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 私自身もその負荷試験の現場を見ております。あのB747型機の巨大な垂直尾翼の先端を油圧装置で掴み、左右に倒したり捻ったりし続け、試験台の上の垂直尾翼からは激しい金属製の悲鳴が上がっていました。航空の安全はこのようにして確保されていますから、御安心下さい。その代り飛行機は高価になります。


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コメント 1

早稲田大学鋳物研究所スキー部長

私も御指摘の紫外線による劣化を心配しています。
材料工学の教科書に載るような第二のコメットにならないことを祈っています。
B7787の開発にあたり、ボーイング社内では、アルミ派と炭素繊維派に分かれたとの話が漏れ伝わっています。

by 早稲田大学鋳物研究所スキー部長 (2012-04-10 22:31) 

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