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原発再稼働から逃げ回る政府の罪 -2/4 [明治維新胎動の地、萩]

                      .by N.Hori

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(WEDGE・20124月号の抄訳               3度あった停電の危機」(一橋大・大学院商学研究科教授、橘川武郎著)

原発の再稼働をめぐって、

「実際には電力供給面でのリスクなど存在しない」

「リスクを煽るのは原発を再稼働させたいがための陰謀だ」

「そもそも東電による昨年の計画停電自体が、同様の陰謀だ」などの意見がある。

これらの見解は間違っており、電力供給リスクは実在する。福島原発事故以降、多くの国民は節電に積極的に取り組んでおり、大きな成果を上げている。節電自体は大切であり、さらに取り組みを強める必要がある。しかし、家庭で3割節電できたとしても、原発を無くせるとは限らない。なぜなら、我が国の電力市場で家庭用需要は約1/3を占めるに過ぎず、残りの2/3を占める産業用需要や業務用需要では、節電はそれほど容易ではないからだ。事故が起こる以前から、日本の電気料金が高かった。そのため、産業用や業務用需要の分野では、既に世界一の節電が進んでいた。

特に、産業需要の分野では、今夏にたとえ停電が回避されたとしても、電力供給不安が存在するだけで、電力を大量に消費する工程、半導体を製造するクリーンルーム、常時、精密温度調整を必要とするバイオ工程、コンピュータで制御された工程など々を有する工場の日本での操業がリスクマネジメント上、困難になる。.

これらの工場は、企業にとって高付加価値製品を製造している場合が多く、日本経済の文字通りの「心臓部」に当たる。それらが海外移転することによって生じる産業空洞化は、「日本沈没」に直結するほどの破壊力をもつ。その影響は、現存する工場の海外移転だけにとどまらず、将来に、新増設する計画の工場の「機会損失」の方が、日本経済に大きな打撃を与えていると言えそうである。

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そのようなブラックアウト寸前の事態の電力供給不安が既に3回起こっている。1回目は、昨年3月17日午前中の東電の電力予備率はわずか0.6%だった。2回目は、8月上旬に東北電力では、予備率がマイナスになり、当時、柏崎原発が稼働しており、余裕があった東電が融通して、5%弱の予備率を確保したが、融通の綱渡りに失敗すれば、ブラックアウトが起きただろう。3回目は、今年2月2、3日に、四国電力と九州電力で予備率が3%前後になった。

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実在する電力供給リスクを取り除くためには、定期検査明けの原発を再稼働させることが必要である。運転再開の前提条件とすべきなのは、福井県が提唱しているように、ストレステストではなく、福島原発事故の教訓を盛り込んだ「新しい安全基準」である。国は、直ちに。立地県知事と地元住民が納得できるような厳格で、分かりやすい安全基準を明示する必要がある。その中身は、過酷事故への対応を前提としたうえで、

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① 立地地域の有史以来最大の地震、津波を想定し、それに耐え. .  うるものにする。(最大限基準)

② 地震学、津波学の世界でより厳しい知見が得られた場合には .

   それを想定へ反映させる。(更新基準)  

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という2点を骨格とすべきであろう。

国は、直ちに暫定的な安全基準を明示し、原発再稼働に道を開くべきだ。


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ぼくあずさ

野田政権の中に、反原発・東電解体を執拗に追及する勢力が
占めており、民主党政権による国家衰退が加速する。マスコミしかり、
何処の国の為のテレビ、新聞なのか。国民が自ら目を覚まさなくては
我々の生活を守れない。
by ぼくあずさ (2012-03-24 07:50) 

村尾鐵男

24日朝のNHKニュース、前半を聞き逃したのですが、何かのアンケートで原発廃止が70%を越えたのこと。
基礎知識を欠き、十分な情報を与えられぬまま、「何となく不安」だから原発を廃止せよ。無責任な思考です。
一方、斑目氏、原子力関係の学者か研究者らしいが、「確立は零ではない」とか、ストレス・テストの結果に「一定の評価」を与えるとか、自信を欠いた政治的な思惑発言が目立ちます。
大半の国民と政府の担当官が、不安感に苛まれつつ暗中模索。今こそ政治の出番なのに、政治主導も、責任回避のために引っ込む御都合主義の横行。
さてさて日本は何処へ。
by 村尾鐵男 (2012-03-24 09:19) 

村尾鐵男

本日、昼過ぎになってようやく一休みできたので、N. Hori さんの上記本分を再度読み、もう一つコメントさせていただきます。
今朝の新聞にも書かれていましたが、原子力発電所が立地する「地元」の定義が曖昧です。
大飯発電所は福井県に立地しますが、隣りの滋賀県にも近く、原子力安全委員会が大飯原子力発電所のストレス・テストの結果に「一定の評価」を与えても、滋賀県は再稼動反対であると滋賀県知事が声を大にしています。
原子力発電所の地元とはどの範囲を指すのか。次から次へと難問が出て来ますが、決められない政府の優柔不断が解決を一層遠くしています。
by 村尾鐵男 (2012-03-24 14:28) 

ぼくあずさ

スマートグリッド導入すれば問題解決などという本末転倒なことが
まかり通る政治主導のお粗末さ。米国での実験失敗に何故目を
つぶるのか。一度権力を握ると、それを死守する弊害が、同級会
ではなく国家運営レベルで起きている。
by ぼくあずさ (2012-03-24 16:10) 

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