Boeing 787型とは -1/4 [稲門機械屋倶楽部]
2012-03 WME36 村尾鐵男
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ぼくあずさ氏から「ボーイング787型旅客機」について記せとの、お断りのできない要請を受けました。B787型は、読者の皆さんもよく御存知の通り、まさに最新型の旅客機で、新聞も飛行機関係の雑誌類も挙って採り上げていることで、それを蒸返しても能がありません。ここでは、「ぼくあずさは地球人」に相応しい社会学的観点から眺めてみましょう。
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炭素繊維と炭素系複合材の使用
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B787型旅客機の重量がどれほどは御存知でしょうか。航空機製造や運航に携わる技術者は、機体の長さや幅よりも、この重さに注目して、その機種の大小を考えます。
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B787型には、現実に製造されるものとして、B787-3、B787-8、B787-9の三種類がありますが、日本の航空会社へ引き渡されるのは B787-8型です。B787-8型旅客機の空の状態での重量は110トンです。これに乗客と貨物と燃料を積んで、最大220トンの重量で離陸することができます。
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暫く前に、新聞で報道されたと記憶しますが、日本企業の東レが供給するB787一機当たりの炭素繊維が23トン、炭素系複合材が35トン、合わせて58トンの炭素系繊維と複合材がB787型旅客機には使われており、この軽量化で、同規模の航空機よりも燃料消費が20%も少なくできました。
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機体重量のほぼ半分が炭素系繊維と複合材で占められており、これは画期的なことで、飛行機は軽く作られなくてはならないので、炭素系繊維と複合材の実用化は大きな恵みとなります。
では、機体の総てを炭素化したらどうかとの疑問を持つ方も多かろうと想像しますが、たとえばエンジンが良い例で、炭素繊維と炭素複合材の使用範囲には、その高温環境下での脆弱性故にまだ制約があります。
. B787型に搭載される英国ロールス・ロイスの Trent-1000型エンジンは自重が11トンほどもあり、双発で22トンが未だ炭素化できない最大の重量物です。
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