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南北線戦争と保護貿易 [サンアントニオ短信]

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あずささん

原稿添付しました。 明日朝からPortland,ORに仕事で週末まで行ってきます。 面白い話題があれば現地から一報します。

大嶋

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南北線戦争と保護貿易、渡辺惣樹氏の本から

   1/10/2012   大嶋邦夫

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米国の歴史の中でも南北戦争は多くの死者を出し、英仏などが参戦すれば米国が分割されかねなかった内戦です。 一般的には、奴隷解放の戦争と理解されています。 日米衝突の根源、渡辺惣樹著ではこの南北戦争の背景を英と米、そして米国南部と北部の経済成長曲線におけるその立つ位置の差からくる対立と解説しています。 すなわち、工業化を達した英国は南部からの綿花を輸入し、自由貿易の名の下に南部諸州との輸入関係を維持しようとする。 一方工業化の緒に就いた北部諸州はこのままでは英国経済に隷属してしまうと危惧する。 この危惧を払拭するため奴隷解放宣言で南部諸州との関係を断ち切り、保護貿易に舵を切る。 1864年の米国平均関税率は47%になっている。 当時の自由貿易理論の背景にはリカードの比較優位の理論があり、自由貿易こそがお互いの利益だと持てはやされたのです。 

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これらの背景は米国歴史を勉強した人には自明でしょうが、日米の文献を広く読んでわかり易く解説したこの本は当面手元において参考にしたい大変良い本です。 国際交渉は基本的にお互いの国のエゴの追及であり、そこに議論を正当化する理論があるということでしょう。 

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この本にはCandinmaruh(漢字が旨くでてきませんでした。 村尾さんの苦労がわかります。)での幕府使節団、万次郎、ワシントンでの歓迎が目に浮かぶよう記述されています。 同様に岩倉使節団の記述、英国にしてやられた通商条約等、米国を知る重要な話題が網羅されています。 国際交渉には優れた情報分析、確かな歴史感が不可欠であると今更のように感じます。

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渡辺氏が20世紀の日米衝突の歴史を日米の文献を丹念に探索して、巧みな記述で再び解説して欲しいものです。


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コメント 3

村尾鐵男

大嶋さんの本文、三段目の初めに記される "Candinmaruh" とは「咸臨丸」のことでしょうか。
今は Wikipedia の英語版でも "Kanrin-Maru" と記されますが、当時はこのように聞こえたのでしょう。
by 村尾鐵男 (2012-01-10 08:12) 

大嶋邦夫

木村摂津守の英文の名刺にはKairin-MaruではなくこのCandin-Maruhが使われていて、この名刺は横浜開港資料館に展示されているようです。 咸臨丸、ここでは変換できました。 不思議です。 Candin-Maruhで検索すると横浜開港資料館の名刺の話がでます。
渡辺惣樹さん、丁寧に調べています。
by 大嶋邦夫 (2012-01-10 10:36) 

村尾鐵男

私も横浜の開港記念館へは幾度か足を運んでいますが、木村摂津守の名刺は気が着きませんでした。
幕末の頃になって、例の韮山代官江川英龍も応援して、長崎でオランダ語のアルファベットの活字が作られるのですが、たとえば "d" と "p" は同じ活字を上下逆さまにして植字しました。おそらく植字工の間違いだと察しますが、珍しい名刺です。
by 村尾鐵男 (2012-01-10 18:20) 

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