詩聖杜甫 -3/10 [稲門機械屋倶楽部]
2011-03 WME36 村尾鐵男
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杜甫の詩を掲げるつもりですが、少々道草をさせていただき、唐の詩人張謂(チョウ・イ)の詩を記します。.
題長安主人壁 張謂
世人結交須黄金
黄金不多交不深
縱令然諾暫相許
終是悠悠行路心.
長安主人の壁(ヘキ)に題す
世人(セジン)交わりを結ぶに黄金を須(モチ)う
黄金多からざれば交わり深からず
縱令(タトイ)然諾(ゼンダク)暫く相(アイ)許るすも
終(ツイ)に是(コレ)悠悠(ユウユウ)行路(コウロ)の心.
この詩は、張謂が進士の試験を受けに長安の宿屋に泊まっていたときに詠まれました。へりくだっていた宿屋の主人が、張謂の進士試験不合格を知って急に掌を返すように横柄になったことに腹を立てて宿屋の壁に一気呵成に書いた詩です。
然諾とは承諾の意味で、悠悠とはのんびりした様から無関心であること、行路心とは旅人の心で、通りすがりの無関係な人を指します。題名の「長安主人壁」とは、長安の宿屋の主人とその宿屋の壁のことです。.
前に記した杜甫の「貧交行」とこの張謂の「題長安主人壁」は交友の真の在り方を詠んだ詩の双璧と言われています。今日でもそうですが、人間同士の付き合いは貧しいときの付き合い方がその後を決めます。
張謂は最初の進士試験には合格できなかったのですが、後には合格し、唐王朝の高官を務めています。張謂が進士に合格した後、長安の宿屋の主人はどのような態度を示したのか、それには記録も古文書もありません。
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