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十八史略 -13 [稲門機械屋倶楽部]

                2010-10-21 WME36 村尾鐡男

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「多多益辨」

上嘗従容問韓信諸將能將兵多少。

上日、如我能將幾何。信日、陛下不過將十萬。      上日、於君何如。

信日、臣多多益辨。上笑日、多多益辨、何以為我禽。

信日、陛下不能將兵、而善將將。此信所以為陛下禽。  且陛下所謂天授、非人力也

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〔上、かつて従容として韓信(カンシン)に諸将の能(ヨ)く兵の将たるの多少を問う。

上曰く、「我の如きは能く幾何(イクバク)の兵の将たるか」

信曰く、「陛下は十万の将たるに過ぎず」。上曰く、「君に於いては如何」

信曰く、「臣は多多益辨ず」。

上笑いて曰く、「多多益辨ぜば、何を以て我が禽(キン)と為(ナ)るや」

信曰く、「陛下は兵に将たること能(アタ)わざるも、善(ヨ)く将に将たり

此れ、信が陛下の禽と為りし所以なり。且つ陛下は所謂天授にして、

人力に非ざるなり」〕

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上は劉邦、即ち漢の高祖であり、話の相手は漢の武将三傑の一人、韓信です。劉邦が韓信に「自分は何人の兵を率いられるか」と問い、韓信は「十万以上は無理だ」と答えます。ならば「韓信はどうだ」と問われ、韓信は「多々益々弁ず」、即ち、「多ければ多いほど上手くやります」と答え、これに対して劉邦が「それなのに、何故、我が臣となっているのだ」と笑いながら問い、韓信は「陛下は兵の将たるは無理だが、将の将として務まる。だから自分は陛下の臣となった」と答え、さらに加えて「陛下は天が授けたもので、人の力で適うものではない」とも答えています。

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前回の「四面皆楚歌」で劉邦と項羽が垓下で戦いましたが、このとき劉邦の軍勢は30万、対する項羽は10万の兵を率いていました。劉邦の側には「多ければ多いほど上手くできる」韓信に加え、韓信に劣らぬ張良(チョウリョウ)と蕭何(ショウカ)がいたので、当然の結果として勝利を得たと考えられます。

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私達の年代層が若い頃には、「多々益々弁ずる」とか「将の将」はよく聞く言葉でしたが、最近は殆ど聞かなくなり、たまに遣っても正しくその意味を受け留めてくれているかどうか不安です。

一国の総理大臣は「将の将」にして、「多々益々弁ずる」資質を備えていなくてはならないのですが、この暫くの間、日本にはそのような総理大臣に恵まれていないのは残念なことです。

(14)に続く


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