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唐詩選、別離と望郷の詩 -10 [稲門機械屋倶楽部]

                                      2010-10-05 WME36 村尾鐵男

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賈島「度桑乾」

客舎并州已十霜 歸心日夜憶咸陽 無端更渡桑乾水    望并州是故郷

〔并州(ヘイシュウ)に客舎(カクシャ)して已(スデ)に十霜(ジッソウ)、歸心(キシン)日夜(ニチヤ)咸陽(カンヨウ)を憶(オモ)う。端(ハシ)なくも更に渡る桑乾(ソウカン)の水、却(カエ)って并州を望めば是(コ)れ故郷〕

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賈島(カ・トウ)は7世紀から8世紀の唐に生きた詩人でありますが、進士でもありました。最初の進士の試験に合格せず、出家して僧となり無法と名を替えましたが、再び還俗して再度の試験で進士に合格しております。

并州は現在の山西省太原であり、咸陽は現在の西安の北西40kmに同じ地名で残っておりますが、并州は咸陽の北東、直線距離で500kmほどの位置です。

桑乾水とは桑乾河のことで、并州のさらに北方300kmほど、万里の長城の南側を流れ、東へ向かって大きく湾曲して北京北方から天津近くを流れて渤海湾へ注ぎます。

賈島が桑乾河を渡って何処へ赴任したのか定かでありませんが、桑乾河と万里の長城との間には大同の街がありますので、その辺りであろうと推察されます。〈并州へ来て既に十年、咸陽を想い、日夜帰心が強まるのに、図らずも桑乾河を渡り、今は并州が故郷のように想える〉との詩です。

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祜「胡渭州」

亭亭孤月照行舟 寂寂長江萬里流 郷國不知何處是     雲山漫漫使人愁

〔亭亭(テイテイ)たる孤月(コゲツ)行舟(コウシュウ)を照らし、寂寂(セキセキ)たる長江萬里(バンリ)に流る。

郷國(キョウコク)は知らず何(イズレ)の處(トコロ)か是(ゼ)なる。

雲山(ウンザン)漫漫(マンマン)人をして愁(ウレ)えしむ〕

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張祜(チョウ・コ)の「胡渭州」(コイシュウ)ですが、張祜については清河の出身と伝えられ、清河は華北省であり、字は承吉としか判りません。胡渭州は西方異民族が歌う曲の楽譜の名です。

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長江、孤月、一艘の小舟、この三つが揃うと詩が詠めるようで、この題材の詩は他にも沢山あります。

                                 (了)


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