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唐詩選、別離と望郷の詩 -1 [稲門機械屋倶楽部]

                 2010-10-05 WME36 村尾鐵男

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王昌齢「重別李評事」(重ねて李評事に別る)

莫道秋江離別難 舟船明日是長安 呉姫緩舞留君酔       随意青楓白露寒

〔道(イ)う莫(ナカ)れ秋江(シュウコウ)離別(リベツ)難(カタ)しと。舟船(シュウセン)明日(ミョウニチ)是(コレ)長安。呉姫(ゴキ)緩舞(カンブ)して君を留めて酔わしむ。随意なれ青楓(セイフウ)白露(ハクロ)寒し〕

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再び王昌齢の詩です。〈秋の川辺での別れを辛いと言うな。明日には船は長安に着くではないか。呉の舞姫にゆったりと舞わせて君を引き留めて酔わせよう。まだ青い楓の葉に冷たい露が降りて寒くなるが、そのようなことに気を遣うのも止めよう〉との意味です。

明日には船が長安に着くと詠っていますので、この川は黄河で、どれほどの大きさの船かは判りませんが、1300年ほど前の黄河は船を航行させることができたようです。今の黄河は時折水の流れが途絶えるほどに水量が減り、中国に於ける自然破壊の凄まじさを物語っております。

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王昌齢の詩の雰囲気を壊してしまう話で恐縮ですが、黄河上流の山々は緑のない土だけの山ばかりで、保水力がありません長江(揚子江)の上流は四川省、雲南省、さらにはチベット自治区の鬱蒼たる自然林で、さすがの中国人もこの辺りまで自然破壊の手を伸ばすことができませんから、長江は今でも満々たる水を下流域へ送っています。

私は、もう15年ほど前のことですが、上海から長江を遡上する定期客船に乗りました。2000トンほどの大型船ですが、終点は四川省の重慶で、船内に掲げてある時刻表では、上海から重慶まで所要時間は一週間と一時間でした。

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今、中国の公安当局は万里の長城を厳重に警戒しています。北から長城を越えて侵入するかもしれない外敵に備えているのではなく、長城の石が盗まれないように見張っているのです。高層マンションで快適な生活をしている中国人は金満狂争曲を奏でることのできた大都市居住のほんの一部の者だけで、人口の90%以上を占める僻地の農民はその大半が泥レンガを積んだ家に住んでいます。木材は山へ入って望むだけ切り出し、泥レンガよりも大きな石の方が長持ちしますから、近くの長城とか城壁から夜間に外して持ち帰ります。

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私も中国各地を訪ねましたが、背の高い大きな木を滅多に見ることがありません。中国人は木々が大きく育つのを待たずに切り倒し、燃料とか木材として消費してしまいます。特に寒冷な北部ほど酷く、黄河の上流では山が禿山になったままで、植林を行って森林を回復させようとの動きはまったくありません。世界環境会議等で、中国はいまだに開発途上国であると自ら主張して、炭素排出の国際的取り決めの枠外に出ておりますが、黄河上流の状況を見る限り、中国は開発途上ではなくて後進国そのものです。

(2)に続く


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