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旧ソ連製航空機の安全性 -6 [稲門機械屋倶楽部]

                                        2010-07-01 WME36 村尾鐵男

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6.旧ソ連製航空機

飛行機は設計、製造、整備がそれぞれ別のものであると私は機会ある度に主張しております。飛行機は優れた技術者によって堅実な設計が行われ、優れた製造設備を駆使して確実な技量を持つ作業員によって製造され、資格を持ち経験豊かな整備士によって飛べる状態に維持されなくてはなりません。

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航空機は型式証明(Type Certificate)を与えられて、初めて乗客と貨物の輸送が可能になり、加えて耐空性証明(Airworthiness Certificate)が定期的に更新されてその性能が保たれるのですが、その耐空性を保証するのが整備の役割であります。しかし、整備と一言で言っても、機体や装備品に取り付く現場作業だけでなく、絶えざる点検と検査、部品の補給、品質と信頼性の管理、教育と訓練等々、広範の亘るもので、航空機の運航には欠かすことができないものです。駄作の航空機も整備が良ければ飛び続けることが可能であり。如何に優れた傑作機でも、整備が悪ければ地上に置かれたままになります。世間では、出来の悪い子供ほど可愛いと言いますが、事業に使う工業製品には通用しない言葉です。

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旧ソ連圏の飛行機を見るとき、設計者は優秀であり、理論構築も日米欧と比較して遜色がなく、空力理論では旧ソ連圏の方が優れている部分もあります。製造方法については、品質管理に未だ達していない部分が多いためか、完成した飛行機が「品質一定」とは言い難かったのが実態でありました。整備については、少なくとも部品補給には最大の難があったとしばしば聞かされておりました。

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飛行機製造会社にとって、部品の補給は大変な難事です。多量に生産した飛行機に部品を補給し続ける義務があり、家電製品の如く、生産終了後の何年かで部品製造を打ち切ると臆面も無く宣言すれば、飛行機は売れず、一方で、少数の飛行機がいつまでも飛び続けては、部品供給側の採算性は崩れてしまいます。製造開始後80年にならんとするDC-3型機は今でも100機ほどが飛んでいるそうですが、部品は供給され続けいるそうです。

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旧ソ連機については、部品供給の悪さに定評がありました。計画経済を得意としたはずの共産主義政権下のソ連で、航空機部品が、何故、計画的に必要にして十分な供給が出来なかったのか不思議です。経済官僚が無能だったのか。縦割り行政が悪弊の極致に達して、部品消費側の情報が部品生産側へ適宜与えられることがなかったのか。加えて、部品の品質管理は初歩以前の状態で、部品の互換性は無いに等しい実情でありました。機体そのもの細部が同寸法で製造されていないので、部品はオーバーサイズで製造されるのが当たり前であり、部品を交換する度に、取り付け場所の寸法に合わせて加工する必要がありました。同じ部品番号の部品であれば互換性があると思うのは私達にとっては常識でありますが、戦前の日本の工業製品もそうであったように、旧ソ連圏で製造された飛行機には部品の互換性はなく、運航するには多大の努力を強いられるのが当たり前でありました。

(7)に続く


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