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イリジウム携帯 [フリューレン村だより]
もう1つが『周回衛星』。イリジウムはこちらの衛星を活用しています。静止衛星よりも低軌道の高度約780km上空に66機の衛星が配置され、こちらも全世界をカバーしています」
――国や地域を問わず、世界中どこでも使えるんですね。
「はい。インマルサットとイリジウムは全世界をカバーしているという点では共通していますが、それぞれに特徴があります。
まず、カバーエリアに関して。インマルサットは静止衛星なので数少ない衛星で広いエリアをカバーすることができますが、北極や南極などの極地はカバーできません。それに対して、イリジウムは周回衛星なので、完全に全世界をカバーします。
また、インマルサットは衛星が約36,000km上空にあるため、どうしても音声の遅延が生まれてしまいますが、イリジウムは約780km上空の低い位置を飛んでいるため、比較的遅延が少なく、一般の携帯電話とほとんど同じ感覚で会話ができます。
音声通話とデータ通信の同時利用に関しては、インマルサットもイリジウムも可能ですが、インマルサットはBGAN端末で最大492kbps、イリジウムはOpenPort端末で最大134kbpsと、インマルサットのほうが比較的高速です。
なお、イリジウムはこれまで音声通話の利用が中心でしたが、2019年2月からは新しい衛星を使って『イリジウムCertus』という本格的なデータ通信にも対応したサービスも開始しました。
端末のバッテリーの持ちは、インマルサットのIsatPhone2が連続待受最長160時間、イリジウムのイリジウムExtremeが連続待受最長30時間と、インマルサットのほうに軍配が上がります」
インマルサットとイリジウムの違い
非常用通信手段として高まるニーズ
――イリジウムは主にどういう人が、どういった目的で使っているのでしょうか?
「省庁、自治体、企業など法人のお客様を中心に、地震、台風、津波といった非常災害時のバックアップ回線として利用されています。1995年の阪神淡路大震災では固定電話網が寸断され、輻輳が生じたため、非常時における携帯電話の重要性が注目されました。
ところが、2011年の東日本大震災では津波によって携帯電話の基地局が倒壊し、電波が途絶えて、携帯電話が使えなくなるケースが少なくありませんでした。そのため、非常用の通信手段として、地上のインフラの影響を受けない衛星電話が見直され、ニーズが高まったのです。
東日本大震災では、auの基地局が復旧するまで、イリジウムをはじめとする衛星電話が陸上自衛隊に配備され、復旧活動のための連絡手段として活用されました」
遭難時や緊急連絡やテレビのロケ等でも活躍
――災害などの非常用の通信手段のほかに、どんなシーンで利用されているのでしょうか?
「冒険家や登山家の方が遭難時の緊急連絡用として持たれるケースがあります。最近ではヨットによる世界一周や犬ぞりによる北極圏走破などで利用されました。
また、海外では現在も携帯電話網が十分に整備されていない地域も少なくないので、そういった場所ではイリジウムが活躍します。テレビ番組のロケなどにも利用されているようです。ただし、衛星電話という性質上、空が広く開けたところでご利用いただく必要があります」
――イリジウムの端末はどういったものがありますか?
「現在は、小型で軽量な『Iridium 9555』と、耐久性に優れた『Iridium Extreme』があります。
『イリジウム 9555』は2009年に発売したモデルです。それまでのイリジウム端末は大きくて重かったのですが、このモデルで大幅に小型軽量化を実現し、持ち運びやすいハンディサイズになりました。
『イリジウム Extreme』はハードな環境でも使えるタフネスモデル。IP65等の防水・防塵性能やMIL規格準拠の耐久性を備えています」
――最後に、イリジウムを使ううえで、注意事項などはありますか。
「先ほどお話したように、イリジウムは非常用としての用途が中心のため、防災訓練のときにしか使わないというお客様も少なくありません。しかしイリジウムに内蔵しているリチウムバッテリーの経年劣化は避けられません。いざというときに使えなくなっていたら元も子もありませんので、定期的(最低でも3か月に1回)に充電していただき2~3年を目処にバッテリーを交換することをおすすめします」
私たちが日頃から使っているスマホやケータイとはまったく違った性質を備えたイリジウム。普通に暮らしている限り、利用する機会はないかもしれない。しかし、ひとたび大きな自然災害が起これば、その恩恵にあずかる可能性は誰にでもある。いざというときのバックアップのために、そして世界中どこでも通信をしたいという人たちの要望に応えるために、今日も衛星は私たちのはるか上空をまわり続けてい