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櫻井よしこ「野田首相に申す」2/2 [明治維新胎動の地、萩]

                 By N.Hori


(産経2012/7/12)


もう一つの課題は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加である。TPPは経済の枠組みを超えた根源的な次元に立つ戦略である。それは日本が依拠してきた価値観、多くの国々が多少の留保はあっても基本的に公正だと認めてきた価値観を担保し、諸国の閉鎖性を緩やかに解き、国を開いていく力となる。


国家にとって経済基盤の安定と強化はまさに生命線である。日本の膨大な財政赤字を考えれば消費税増税の首相の決断を評価する。小沢氏らの離党の直接のきっかけとなったこの増税は、良識ある人々なら誰もが必要だと考えていることの一つである。1000兆円規模の財政赤字は若い世代にツケとして回される。若ければ若いほど負担は大きい。とりわけこれから生まれる子供たち(将来世代)がその一生で引き受けなければ純負担は一人当たり1億500万円に上がる。この数字は内閣府経済社会総合研究所の分析結果だ。
生まれながらに億単位の借金を子供や孫ら未来の日本人に背負わせるような財政状態では日本の繁栄など到底覚束ない。第一、将来世代の子供たちが気の毒だ。

増税はどの時代においても不人気だ。ポピュリズムに堕ちた政治家には到底、言い出せない増税を野田首相は兎にも角にも決断した。
原発再稼働も真っ当な判断だった。それでもまだ首相は民主党の負の遺産に絡めとられている。7月1日に始まった自然再生エネルギーの全量固定価格買取制(FIT)である。太陽光、地熱、風力、バイオマスなどによる再生可能エネルギーの電力を、最長20年間、電力会社に買い取らせる。太陽光電力の買取価格は業界の要望よりも高く、1kwh42円とドイツの2倍以上になった。これは最終的には国民負担となる。日本が手本にするドイツは、1991年にFIT導入から20年後の現在、大幅な見直し(買い取り価格の更なる値下げ)を進めている。累積で約10兆円を注入しても太陽光発電はドイツの総電力量の3%を占めるにすぎない。

ドイツの事例から学べるのは、自然再生エネルギーの将来の可能性は大きいとしても、現時点での経済効率は低く、安定的な基礎エネルギーとするには相当な期間がかかるということだ。ドイツの失敗の例をそのまま真似た日本版FITは、管首相の極端に偏ったエネルギー政策の置き土産である。野田首相は脱原発を軌道修正したが、FITの行き過ぎなど菅首相の悪しき残滓を徹底的に払拭しなければならない。


いま政府は将来の日本のエネルギー政策における原発比率などを「討論型世論調査」を行って国民の意見を反映させて決定するとしている。エネルギー政策は国の経済政策の根本で、安全保障政策でもある。民意の大切さは言うまでもないが、国の基本政策を民意に丸投げで決めるようなことは責任ある政治家のすることではないだろう。
                                     


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村尾鐵男

最近、我が家への見ず知らずの会社から屋根に太陽光パネルを載せないかとの電話が幾度かあり、費用は殆ど掛からず、しかも東電への売電で月々の電気代はタダも同然との売り込みです。
でも、納めるべき税金が上がり、電気代もいずれは上がるだろうと問うと沈黙したままです。
そもそも仕組みそのものに菅直人流の不合理を内包しているので、いつかは破綻する仕組みでしょう。

ところで、民主党、消費税増税で小沢グループを蹴り出しました。次はTPPです。TPP交渉への参加表明で、民主党農林グループが次に蹴り出されて、さて、民主党にどれほどが残るのか。
by 村尾鐵男 (2012-07-13 08:11) 

村尾鐵男

今日の昼過ぎ、近所の奥さんから「ソーラーパネルを屋根に載せたいけど、どうかしら」と問われました。
手に持つパンフレットを読むと、3年で元が取れると書いてあります。
元を取るのに10年は要しようと私は思っているのですが、次第に話が誇張されて今や3年です。
国を挙げての壮大、且つ官製の詐欺にならないことを願います。
by 村尾鐵男 (2012-07-13 16:26) 

N.Hori

カリメロさん、裏・市長さん、miさん、nikiさん、rtfkさん、アルマさん、niceを有難度うございました。村尾さん、コメントを有難度うございました。
by N.Hori (2012-07-14 15:50) 

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